UV硬化銀ペーストが印刷エレクトロニクスを変える、スクリーン印刷に対応へ:実装ニュース
田中貴金属工業は、紫外線(UV)照射によって硬化する導電性銀ペーストのスクリーン印刷対応品「UV700-SR1J」を開発した。これまでスクリーン印刷に用いられてきた熱硬化タイプの銀ペーストよりも微細な70μmの線幅での回路形成を実現できるという。
田中貴金属工業は2014年7月8日、紫外線(UV)照射によって硬化する導電性銀ペーストのスクリーン印刷対応品「UV700-SR1J」を開発したと発表した。これまでスクリーン印刷に用いられてきた熱硬化タイプの銀ペーストよりも微細な70μmの線幅での回路形成を実現できるという。
プリント基板の回路形成に用いられる銀ペーストは、熱処理によって硬化する熱硬化タイプが一般的だ。しかし熱処理が必要なことから、ポリ塩化ビニルフィルムやPETフィルムなどの熱に弱いフレキシブルな基材への配線に適用することはできなかった。田中貴金属工業が2012年1月に開発したUVを照射するだけで硬化する銀インクは、熱処理が不要なため、いわゆる「プリンテッドエレクトロニクス」に用いられるフレキシブルな基材への配線に最適という特徴を有している。さらに硬化時間も、熱硬化タイプと比べて、UV硬化タイプの方が圧倒的に短いというメリットもあった。
しかし、UV硬化銀インクは、大量生産に用いられるフレキソ印刷にのみ対応しており、開発案件が多いプリンテッドエレクトロニクスに用いられる多品種対応の少/中量生産向けのスクリーン印刷には対応しいていなかった。
今回開発したUV700-SR1Jは、UV硬化銀インクを改良しスクリーン印刷で利用できるようにした製品である。スクリーン印刷は、版自体に穴をあけたメッシュ版からペーストを擦りつける孔版方式の印刷手法だ。銀ペーストは、版を離しても滲まないチキソ性(揺変性とも)と基板密着に適した粘度を備えたペースト状であることを同時に実現しながら、ペーストに含まれる銀粉をメッシュ版を通過できる微細なものにする必要もある。また、メッシュ版を使うスクリーン印刷の銀ペーストの膜厚は、フレキソ印刷で銀インクを使う際の5μmよりもはるかに大きい10μm以上になってしまう。この膜厚でもUVで硬化できる特性も求められていた。
同社は、銀ペーストの主成分である樹脂と銀粉の配合を見直すことにより、スクリーン印刷に対応するUV700-SR1Jを製品化した。印刷時の線幅も70μmと、熱硬化タイプの銀ペーストよりも微細なため、タッチパネルなどの透過度を高められるという。この他、熱に弱いあらゆるフィルム基材に配線を形成できるので、柔軟性を求められるウェアラブルデバイスのアンテナや服薬管理用の電子パッケージ、色素増感型太陽電池製品などに適用できるしている。
また、熱硬化タイプの銀ペーストが熱処理に数時間かかるのに対して、UV硬化銀ペーストはUVを10秒照射するだけで済むので、生産性の大幅な向上が可能だ。
なおUV700-SR1Jは、2014年7月8〜10日まで米国カリフォルニア州サンフランシスコで開催される「SEMICON West 2014」で展示される。
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