パワー半導体向けシート状接合材料を開発 対応チップサイズ20mm角で鉛フリー:材料技術
田中貴金属工業は、パワー半導体用パッケージ製造におけるダイアタッチ向けシート状接合材料「AgSn TLPシート」を開発した。
田中貴金属工業は2025年1月23日、パワー半導体用パッケージ製造におけるダイアタッチ向けシート状接合材料「AgSn TLPシート」を開発したと発表した。
加熱温度250℃での液相拡散接合に対応
近年、電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)、産業インフラなどの用途を中心に、大電流タイプのパワー半導体のニーズが高まっている。それに伴い、大型化するシリコン(Si)チップの接合において、高い信頼性を担保しながら、大きな面積を接合できる材料が求められている。
また、パワー半導体を含む半導体デバイスは、高温による故障や低寿命化といった影響があるため、高温耐熱性が必要となる。パワー半導体パッケージ製造において現在、主に採用されている接合材料は、高鉛はんだや、耐熱性が低いSAC(Sn、Ag、Cu)はんだ、銀(Ag)焼結剤だ。しかし、環境負荷の低減を目的にこれらの材料から別材料への切り替えが進んでいる。
こういった状況を踏まえて、田中貴金属工業はAgSn TLPシートを開発した。AgSn TLPシートは、最大20mm角までの半導体チップ接合に対応している他、3.3MPaの低加圧で接合が可能で、半導体製造における歩留まり改善にも貢献する。
さらに、加熱温度250℃での液相拡散接合に応じる。接合後は耐熱温度が480℃まで上がるため、既存材料よりも高い耐熱性を有す。接合強度は最大50MPaを維持するため、さまざまな被接合材に対応する。加えて、鉛フリーの接合部材で、3000サイクルのヒートサイクル試験を通過しており高い接合信頼性を備えている。
なお、田中貴金属工業はAgSn TLPシートが大面積接合に対応しているため、パワー半導体用ダイアタッチ材料としての使用に加え、電子機器内で発生する不要な熱を放熱するために部材間に挿入する熱伝導性材料「TIM材」の代替材料としての使用も想定している。
半導体パッケージの製造では、熱伝導率が高いさまざまな材料が開発されてきたが、TIM材の熱伝導率の低さがトータル熱設計のネックとなっていた。AgSn TLPシートは、50mm以上のTIM材の大面積接合に応じ、かつ高い熱伝導率を備えているため、半導体パッケージ製造における熱マネジメントへの貢献が期待できる。
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