パナソニックHDの1Q決算は順調も、EV低迷でカンザス工場のフル生産は後ろ倒しに:製造マネジメントニュース
パナソニックHDは、2026年3月期第1四半期の連結業績を発表した。米国政府の環境政策の転換などによる北米EV市場の低迷から北米電池工場のフル生産時期は後ろ倒しにする。
パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)は2025年7月30日、2026年3月期(2025年度)第1四半期の連結業績を発表した。米国政府の環境政策の転換などによる北米EV市場の低迷から北米電池工場のフル生産時期は後ろ倒しにする。
オートモーティブを除くと増収増益の好結果
パナソニックHDの2025年度第1四半期の連結業績は、売上高が前年同期比11%減の1兆8967億円、調整後営業利益が同8%増の915億円、営業利益が同4%増の869億円、税引き前利益が同13%減の910億円、当期純利益が同1%増の715億円となった。2024年度までは連結業績にオートモーティブ分野が含まれていたが、米国Apollo Global Managementが投資助言を行うファンドに売却し連結から離れたことから、オートモーティブ分野を除いて前年同期と比較すると、売上高は2%増、調整後営業利益は22%増、営業利益は24%増と、改善が進んでいる。
パナソニックHD 執行役員でグループCFOの和仁古明氏は「オートモーティブの非連結化の影響で全体では減収となったが、全セグメントで増収となった。調整後営業利益も全セグメントで増益となり、米国関税影響などをカバーした」と手応えについて語っている。
セグメント別では、くらし事業は増益となった。家電で洗濯機が堅調となった他、調理機器の体質強化が進んだ。さらに、空質空調で欧州のA2W(Air to Water)の回復が見られた。コネクトはブルーヨンダーでは戦略投資の増加で減益となったが、プロセスオートメーションやモバイルソリューションズの増販があり増益となった。インダストリーは、生成AI(人工知能)サーバなど情報通信関連製品が好調で増益となっている。エナジーは、車載電池では米国カンザス工場や和歌山工場の立ち上げ費用が増加したものの、ネバダ工場の販売増や価格改定、合理化により増益となった。また、産業/民生向け電池はデータセンター向け蓄電システムが伸長し増益となっている。
カンザス工場のフル生産は後ろ倒しに
通期業績見通しは、2025年5月に発表時から変わっていない。ただ、エナジー事業については、米国でEV(電気自動車)向けに実施されていた補助金「IRA-30D」の廃止で減速傾向が懸念されることなどから期初の見通しに対し、カンザス工場の増産スピードを下げ、フル生産の時期を遅らせる。
和仁古氏は「北米EV市場の需要が予測より少ないことが見えてきたため、需要動向に合わせて生産体制を整える方針の下、生産拡大を後ろ倒しにした。フル生産の時期については、需要を精査しており現時点では明言できない。ただ、IRA-30Dは廃止となったが、電池部材に向けた補助金である『IRA-45X』は継続している。カンザスで生産し始めた5%の容量を増やした新機種の評判もよく、今後も相対的な競争優位性を持つ。当初見通しほどの生産増にはならないものの、2024年度は上回る生産量にはなる見通しだ」と語る。
一方で、セグメント別の通期業績見通しでは、コネクトの営業利益を500億円下方修正し、その他領域を500億円上方修正した。このコネクトの営業利益の下方修正については、2024年7月にオリックスとの間で契約していた業務用プロジェクターおよび業務用ディスプレイ事業の売却が破談になったことの影響だとしている。
また、米国の関税影響については「変化が大きいために通期業績見通しには織り込んでいない」(和仁古氏)としている。ただ、相互関税と自動車関税が15%に引き下げられた影響については「2025年5月の発表では米国関税の影響は連結売上高の1%に抑え込めると述べたが、現在の変化でさらに減らすことができる見通しにはなっている」と和仁古氏は述べている。
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