東芝エネルギーシステム、年間150トンCO生成できる低温CO2電解装置が実証完了:製造マネジメントニュース
東芝エネルギーシステムズと東芝は、年間150トンの一酸化炭素(CO)を生成できる二酸化炭素(CO2)電解装置「C2One」プロトタイプ機の実証運転を完了した。水素を使わず、低温低圧反応でCOを生成できる。
東芝エネルギーシステムズと東芝は2025年6月24日、年間150トン(t)の一酸化炭素(CO)を生成できる二酸化炭素(CO2)電解装置「C2One」プロトタイプ機を開発し、その実証運転を完了したと発表した。水素を使わず、約100℃未満の低温反応で、COを安価かつ安全に生成できるようになる。
実証運転に使われたプロトタイプ機は、年間約250tのCO2を処理し、年間150tのCOを生成できる設計になっている。持続可能な航空燃料(SAF)に換算すると1日当たり1バレルほどを製造できることになる。実証運転を通じて、CO2電解装置としての動作の安全性を確認し、想定どおりにCOを生成できるか、需要に応じて負荷が変動する運転に対応できるかなどの点を評価した。CO2電解装置の社会実装に向けた多くの知見を得られ、評価を完了したと報告している。
C2Oneプロトタイプ機のサイズは、6.1×2.4×2.6m。標準モジュール構成は20フィートコンテナに納まり、需要に応じて増設可能だ。CO生成量は定格の30%から100%まで、必要な量を生成できる。
CO2からCOを生成する過程においては、東芝が開発した三相界面制御触媒技術を利用。CO2は常温常圧に近い条件では水に溶けにくいが、人工光合成技術を用いて気体状態のままCOへ直接電解する。
一般的なCO2還元技術では、還元材料に大量の水素が必要となり、CO生成に850℃程度の高温条件を整えねばならない。また取り扱いが難しく、生成コストが高くなるという課題がある。東芝のCO2電解技術は、100℃未満で0.2MPaという低圧の条件下でも反応し、還元材料として水素も不要なため、取り扱いが容易だ。より安全にコストをかけず、COを生成できると見込んでいる。
さらに、C2Oneの主要部品であるセルスタックは、東芝エネルギーシステムズがこれまで製造してきた純水素燃料電池システム向けのスタックと構造が似ている。既存の製造技術と製造ラインの一部を利用できるという利点もある。
脱炭素社会の実現に向けて、工場などから排出されるCO2の削減が求められている。再生可能エネルギーを使ってCO2を資源化するP2C(Power to Chemicals)への期待が高まっており、CO2の分離回収技術、COと水素を反応させるFT合成技術はすでに実用化されているが、CO2をCOに還元する技術は開発途上で、各国が実用化を目指して注力している状況だ。
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