工場などが排出する低濃度CO2に特化、デンソーが大気CO2回収システムを開発:脱炭素
デンソーは、「人とくるまのテクノロジー展 2022 YOKOHAMA」において、「大気CO2回収システム」を展示した。街や工場から排出される大気中濃度で7%程度までの低濃度CO2を効率よく回収できることが特徴。回収した低濃度CO2をメタン化などによってエネルギー循環させることでカーボンニュートラルに貢献できるという。
デンソーは、「人とくるまのテクノロジー展 2022 YOKOHAMA」(2022年5月25〜27日、パシフィコ横浜)において、「大気CO2回収システム」を展示した。街や工場から排出される大気中濃度で7%程度までの低濃度CO2を効率よく回収できることが特徴。回収した低濃度CO2をメタン化などによってエネルギー循環させることでカーボンニュートラルに貢献できるという。
展示した大気CO2回収システムは、電圧を印可するとCO2を吸着する特性を持つ積層スタックを用いている。電圧を印可した状態でCO2を含む大気をシステムの入り口から流し込むと、CO2濃度の低い“クリーン大気”がシステムの出口から放出される。積層スタックで十分にCO2を吸着した後に電圧を切り替えれば、積層スタックからCO2を脱離させてメタン化などのプロセスに利用できるという仕組みだ。
CO2回収に使う電力のCO2排出量はCO2回収量の10分の1としており、高い回収効率を実現できている。森林と比べた場合のCO2回収量は400倍になるという。展示で示したデモ映像では、CO2濃度が0.04%(400ppm)の通常の大気を用いてCO2を回収する様子を見せた。
CO2回収システムでは、大手重工メーカーと中心に、大気中濃度で10%以上になる高濃度CO2を排出する火力発電所など向けの開発が進んでいる。これらのCO2回収プラントが大規模なのに対し、デンソーの大気CO2回収システムは街や工場などから排出される大気中濃度で7%程度までの低濃度CO2の回収を想定している。「目指しているのは、必要な場所で、どこでもCO2回収だ」(デンソーの説明員)という。
デンソーは2035年をめどに、カーボンクレジットを活用しない「完全なカーボンニュートラル化」を目指している。かなり厳しい目標だが、これを実現するには大気CO2回収システムの早期実用化も必要になる。「そのためにも2020年代のうちには実用化できるように開発を進めたい。自社だけでなく他社でも利用してもらうことで、社会全体のカーボンニュートラルにも貢献できるだろう」(同説明員)。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- いまさら聞けない「CO2ゼロ工場」
「カーボンニュートラル化」が注目を集める中、製造業にとっては工場の「実質的CO2排出ゼロ化」が大きなポイントとなります。本稿では「CO2ゼロ工場」のポイントと実現に向けてどういうことを行うのかを簡単に分かりやすく紹介します。 - デンソーが進めるモノづくりのカーボンニュートラル化(前編)
デンソーは2022年4月22日、2035年に「完全なカーボンニュートラル化」を目指す中で現在取り組んでいるモノづくりの省エネ化についての報道向け説明会を開催。工場のカーボンニュートラル化に向けた推進体制や具体的な取り組みについて紹介した。本稿では前編として取り組みの全体像、後編では2021年度省エネ大賞を受賞した幸田製作所での取組を紹介する。 - デンソーが進めるモノづくりのカーボンニュートラル化(後編)
デンソーは2022年4月22日、2035年に「完全なカーボンニュートラル化」を目指す中で現在取り組んでいるモノづくりの省エネ化についての報道向け説明会を開催。工場のカーボンニュートラル化に向けた推進体制や具体的な取り組みについて紹介した。本稿では前編として取り組みの全体像、後編では2021年度省エネ大賞を受賞した幸田製作所での取り組みを紹介する。 - デンソーが人工光合成システムを開発中、回収した炭素はカーボンナノチューブに
デンソーは2021年5月26日、オンラインで事業戦略説明会を開き、2035年のカーボンニュートラル達成に向けたロードマップを発表した。 - 製造業の脱炭素って本当に可能ですか? 欧州よりも積極性が求められる日本
国内製造業は本当に脱炭素を実現できるのか――。この問いに対して、本連載では国内製造業がとるべき行動を、海外先進事例をもとに検討していきます。第1回は脱炭素を巡る欧州と日本の「共通点」と「相違点」を解説します。 - なぜBASFは製品4万5000点のCO2排出量を可視化できたのか
国内製造業は本当に脱炭素を実現できるのか――。この問いに対して、本連載では国内製造業がとるべき行動を、海外先進事例をもとに検討していきます。第2回は世界最大の化学素材メーカーであるBASFを題材に、同社がいかにして製品のCO2排出量可視化に取り組んだかを解説します。