骨のような3Dプリンタ製チェア 生物模倣を取り入れAI搭載バーチャルツインで開発:デザインの力
ダッソー・システムズは、フランスのデザイナーであるパトリック・ジュアン氏と共同開発した軽量チェア「Ta.Tamu」を発表した。格子構造のデザインは「3DEXPERIENCEプラットフォーム・オン・ザ・クラウド」を活用して設計され、3Dプリンタで一体造形されている。
ダッソー・システムズは2025年6月25日、フランスのデザイナーであるPatrick Jouin(パトリック・ジュアン)氏と共同で開発した軽量チェア「Ta.Tamu」を発表した。
同製品は、AI(人工知能)を活用したバーチャルツインと材料の効率的な使用を組み合わせた、生成経済を推進するコンセプトモデルとして位置付けられている。設計の初期段階にライフサイクルアセスメント(LCA)の観点を取り入れ、アイデアの創出とコンセプト開発の成果として実現したものである。
設計には、ダッソー・システムズの「3DEXPERIENCEプラットフォーム・オン・ザ・クラウド」(以下、3DEXPERIENCEプラットフォーム)が活用され、折り畳まれた状態で3Dプリンタにより一体造形された。格子構造が施されたデザインで、重量は3.9kg。耐荷重は100kgを実現している。
生物模倣や人間の身体構造からデザインを着想
デザインの着想は、バイオミメティクス(生物模倣)および人間の身体構造(骨密度や関節の可動性など)に基づいて得られたものである。
設計チームは、AIを搭載したバーチャルツインを軸に、複雑な組み立て部品の動作をモデリング、シミュレーションし、各接合部や可動部、圧力、支持領域においてトポロジー最適化を実施した。
今回の取り組みは、3DEXPERIENCEプラットフォームとの密接な相互作用を通じてリアルタイムで設計作業が進められ、変更内容は即座にバーチャルツインへ反映され、可視化された。デザインとのバランスを取りながら椅子の幾何学形状を調整し、最終的に動き、機能、構造が融合した最適設計が実現された。
これにより、通常使用される素材や要素を全て含んだ密度状態と比較して、重量を75%削減した理想的な形状に仕上がったという。
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