物流企業のEV導入に4つの課題、4200台導入したヤマト運輸の対策とは:脱炭素(3/3 ページ)
ヤマト運輸が約15年にわたるEVの活用を中心に同社のサステナビリティの取り組みについて説明。2030年度までに、4万台の集配車両の約60%に当たる2万3500台のEVを導入するなどして、2020年度比でGHG(温室効果ガス)排出量を48%削減する目標の達成を目指す。
新たに2つの事業モデルをスタート
さまざまな脱炭素の取り組みに基づき、現在同社は宅配便3商品(宅急便、宅急便コンパクト、EAZY)について、GHGのスコープ3に対応可能な「カーボンニュートラル配送」に切り替えている。現時点でのGHG排出量の不足分については、同等の気候変動対策事業への投資によるオフセットによりカーボンニュートラルを実現している。
そして、これまでの取り組みで培ったノウハウを生かした新たな事業モデルの構築も進めている。事例は2つあり、1つは2024年10月に立ち上げた新事業「EVライフサイクルサービス」で、もう1つは2025年1月に設立した、地域の再エネ電力の活用を推進する新会社のヤマトエナジーマネジメントである。
EVライフサイクルサービスは、ヤマト運輸の約15年に及ぶEV導入のノウハウと知見を生かして、車両を使用する事業のEV導入のハードルを下げることを目的としている。サービス内容としては、GHG削減計画の立案から再エネ電力の供給までワンストップで提供するとしている。既に医薬品を手掛けるアルフレッサグループの5拠点に45台のEVを導入しており「この他にも業種を問わず多くの企業から問い合わせがあり、ほぼ導入が決まっている会社もある。数年後にはトータルで3000台のEVに対してサービスを提供できるようにしたい」(上野氏)という。
ヤマトエナジーマネジメントは、全国に約3500カ所の拠点を展開するヤマトグループのネットワークを生かして、地域で発電した再エネ電力を活用し、物流企業や車両を使用する事業者の脱炭素化と地域社会の発展に貢献することを目指している。上野氏は「地方は再エネの発電ポテンシャルはあるが電力ユーザーがいないという課題がある。そこで、ヤマトグループ自身も含めてEVの電力に利用して、再エネの地産地消に貢献する」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
バッテリー交換式EVトラックの公道実証、三菱ふそうとヤマト運輸
三菱ふそうトラック・バスはヤマト運輸やAmpleとバッテリー交換式EVトラックの公道実証を行う。ホンダとヤマト運輸が軽商用EVで集配業務の検証、冷蔵冷凍品も対応
ホンダとヤマト運輸は、集配業務における軽商用EVの実用性の検証を実施する。ヤマト運輸が進める宅急便DX、エッジ端末で事業をサイバー化
ヤマト運輸 執行役員 DX推進担当の中林紀彦氏は、NVIDIA主催のオンラインイベント「NVIDIA AI DAYS 2022」(2022年6月23〜24日)の初日に行われた「EDGE DAY」において「エッジコンピューティングで加速する宅急便のDX」と題して講演し、ヤマト運輸が進めるDX(デジタルトランスフォーメーション)やエッジコンピューティングへの取り組みについて紹介した。「置き配」で自家用車を指定して荷物受け取り、ヤマト運輸が実証実験
KDDIとヤマト運輸、プライム ライフ テクノロジーズは2022年2月1日、デジタルキーを活用して自家用車の荷室に荷物を配達する実証実験を実施すると発表した。中型トラックもEVに、ヤマト運輸がウォークスルータイプを導入
ヤマト運輸は2020年2月14日、いすゞ自動車が開発した中型トラックタイプの電気自動車(EV)「エルフEVウォークスルーバン」を1台導入したと発表した。共同物流のハードルを下げる、ヤマトと富士通がマッチングサービス
ヤマトホールディングス傘下のSustainable Shared Transportと富士通は共同輸配送システムを稼働させる。共同輸配送システムでは幹線輸送をベースに荷主企業と物流事業者をマッチングさせる。