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物流企業のEV導入に4つの課題、4200台導入したヤマト運輸の対策とは脱炭素(2/3 ページ)

ヤマト運輸が約15年にわたるEVの活用を中心に同社のサステナビリティの取り組みについて説明。2030年度までに、4万台の集配車両の約60%に当たる2万3500台のEVを導入するなどして、2020年度比でGHG(温室効果ガス)排出量を48%削減する目標の達成を目指す。

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独自開発のEMSで夜間のEV一斉充電のピーク電力を平準化

 このようにEV導入を積極的に進めてきたヤマト運輸だがさまざまな課題も見えてきており、会見では4つの課題を挙げた。

 1点目は、夜間のEV一斉充電による電力コストの上昇である。例えば、1カ所の集配拠点で扱う数十台のEVの配送車両が同時に充電を開始してしまうと、電力基本料金の基準となるピーク電力が極めて高くなってしまい、拠点の年間の電力料金が数百万円上がってしまう。そこで、夜間のEVへの充電を平準化するEMS(エネルギーマネジメントシステム)を開発し、ピーク電力を約半分に抑えられるようにした。現在、グリーンイノベーション基金の実証エリアである群馬県を中心に導入を進めているところだ。

EMSの開発
EMSの開発[クリックで拡大] 出所:ヤマト運輸

 2点目は、EV導入の拡大に合わせた電力使用量の増大と、これらの電力を再エネで賄うための取り組みが必要になることだ。ヤマト運輸では、2030年度までに2万3500台のEVを導入した場合、従来比で電力消費量が1.5倍になると想定している。そのために再エネ由来電力の使用率を高めるなど調達を強化しているが、近年の取り組みで重視しているのが自治体と連携した物流の脱炭素化と再エネ電力の地産地消化である。高津千年営業所(川崎市高津区)では、川崎市の脱炭素先行地域に当たることから、自治体の支援を受けて太陽光発電設備や蓄電池を導入し、先述したEMSの適用も行い、25台のEV集配車両への電力供給に利用している。ただし、太陽光発電設備や蓄電池を活用しても1日の必要な電力の30〜40%にしかならない。そこで、残りの電力については、川崎市が運営に関わる川崎未来エナジーの再エネ電力を調達しており、消費電力の100%の再エネ化と地産地消を実現している。

地域の再エネ電力の活用
地域の再エネ電力の活用[クリックで拡大] 出所:ヤマト運輸

 3点目と4点目の課題は「EVの充電時間の長さ」と「日中の稼働時間帯と太陽光発電の発電時間の重複」だ。現在は、3kWや6kWの普通充電器を使って夜間にEV集配車両への充電を行っているが、理想的には昼間に太陽光発電で得た電力をそのまま使う方が無駄が少ない。そこで自動車メーカーと開発を進めているのが、バッテリー交換式EVである。車体からバッテリーを取り外して交換できるので、昼間の車両稼働中でもスペアバッテリーを充電しておくことができる。これまでに、CJPT(Commercial Japan Partnership Technologies)との交換式バッテリーの規格化/実用化検討や、ホンダと軽EVでの実証などを行っており、2025年9月からは三菱ふそうトラック・バスと三菱自動車、Ampleと、東京で150台超の共同実証を行う予定である。

バッテリー交換式EVの実証
バッテリー交換式EVの実証[クリックで拡大] 出所:ヤマト運輸

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