ヤマト運輸が進める宅急便DX、エッジ端末で事業をサイバー化:組み込みイベントレポート
ヤマト運輸 執行役員 DX推進担当の中林紀彦氏は、NVIDIA主催のオンラインイベント「NVIDIA AI DAYS 2022」(2022年6月23〜24日)の初日に行われた「EDGE DAY」において「エッジコンピューティングで加速する宅急便のDX」と題して講演し、ヤマト運輸が進めるDX(デジタルトランスフォーメーション)やエッジコンピューティングへの取り組みについて紹介した。
ヤマト運輸 執行役員 DX推進担当の中林紀彦氏は、NVIDIA主催のオンラインイベント「NVIDIA AI DAYS 2022」(2022年6月23〜24日)の初日に行われた「EDGE DAY」において「エッジコンピューティングで加速する宅急便のDX」と題して講演し、ヤマト運輸が進めるDX(デジタルトランスフォーメーション)やエッジコンピューティングへの取り組みについて紹介した。
創業1919年と100年を超す歩みを持つヤマト運輸は、構造改革の真っただ中にある。ECの普及などで取扱荷物量が増える一方、人手不足に直面するなど事業環境の変化にさらされている。そこで同社は、2020年に次の100年の成長を見据えた経営構造改革プラン「YAMATO NEXT 100」を策定した。その基本戦略が「宅急便のデジタルシフト」「ECエコシステムの確立」「法人向け物流事業の強化」の3つだ。
「宅急便のデジタルシフト」では、ロボットや自動ソーティングシステムを使い、AI(人工知能)を活用しながら最適化、低コスト化を図っている。また、通信アプリで受取日時や場所の変更をできるようにするなど、CX(顧客体験)を強化している。
また、EC分野への取り組みも強めている。ヤマト運輸はイギリスのドドル(Doddle)と提携し、スーパーやドラッグストアが専用端末を導入するだけでEC荷物の受取拠点になれるサービスを2020年から展開している。2022年には、オートロック付きマンションへの置き配をスムーズにするため、事前に置き配指定と鍵の解錠承認をしたEC利用者を対象に、配達員が一時的にオートロックを解除し、置き配するサービスを一部地域でスタートした。
法人向け事業強化に向けては、2021年に機能別に8つあった事業会社をヤマト運輸に統合し、「顧客のタイプに合わせた法人事業を展開する形に転換した」(中林氏)。
エッジデバイスを業務データの可視化に活用
これら3つの事業構造改革を実現するために、「グループ経営体制の刷新」「データドリブン経営への転換」「サステナビリティへの取り組み」という3つの事業基盤構造改革を行っている。
「データドリブン経営への転換」では、デジタル分野に1000億円を投資し、300人規模のデジタル組織を設けて、デジタル基盤「Yamato Digital Platform」の構築などを進めている。中林氏は「細分化され、複雑に絡み合ったものを作ると柔軟な経営には程遠くなる。アーキテクチャをしっかりデザインして、実行することが重要」と語る。
ヤマト運輸の年間取扱荷物量は約23億個、多い日には1日に1000万個の荷物を配達する。「23億個の荷物を運ぶためにフィジカルの接点、リソースをたくさん持っている。そういったフィジカルな部分と、サイバー空間をどうつなげるかというデザインも重要と考えて、エッジコンピューティングの実装を進めている」(中林氏)。
例えばヤマト運輸が約70カ所持つベースと呼ばれる荷物の中継地点では、魚眼カメラなどを取り付けてIPネットワークでつないでいる。その映像をエッジ端末で処理して、荷物の形状や数などのデータを収集する実験を行っている。解析結果はクラウド環境にアップロードし、業務データと組み合わせながら現場の可視化に利用する。
デジタル上にAGVの動線を作成し、経路をエッジ端末に転送、その指示を受けたAGVがシミュレーション通りに走行するかなど、AGVの自律走行に向けた実験を行っている他、エッジデ端末を用いて自然言語による対話機能などの付加価値を持ったロボット、AGVの開発も目指しているという。
「これらをさらに高度化していき、フィジカルな物事をサイバー空間に写し取ったデジタルツインを作り、経営の意思決定やAI(人工知能)のシミュレーション、実行などにつなげていきたい」(中林氏)
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