2020年に10万人不足するトラックドライバー、自動運転は物流を救えるか:人とくるまのテクノロジー展2017 講演レポート(1/2 ページ)
DeNAと共同で新しい物流サービスの開発に取り組むなど、自動運転技術の活用に積極的なヤマト運輸。ヤマトグループ総合研究所の荒木勉氏が、自動運転技術がもたらす物流サービスの可能性や物流業界の将来の課題について説明した。
自動車に関する最新技術を集めた「人とくるまのテクノロジー展2017」(2017年5月24〜26日、パシフィコ横浜)の講演会でヤマトグループ総合研究所 専務理事の荒木勉氏が講演した。「物流サービス 自動運転の将来、役割、可能性」をテーマに、自動運転技術がもたらす物流サービスの可能性や、ヤマト運輸の取り組み、物流業界の将来の課題について紹介した。
ヤマト運輸は1919年に創業した。社員数は現在約20万人で、2015年度の売り上げは約1兆4000億円。宅配便の取り扱い個数は2016年度実績で18億6700万個に達している。こうした巨大企業に成長したヤマトグループだが、物流業界特有の課題も多く、この解決策として自動運転が大きな注目を浴びている。
現在、国内物流を支えているのはトラック輸送だ。輸送全体の96%を占めるが、ドライバー不足が一層深刻化している。2020年には業界全体の輸送量に対してドライバーが10万人不足するとの予測があり、宅配便の件数も2022年には2016年比で2割の増加が見込まれる。
荷物の輸送量が増える12月は平月の1.8倍近い取扱量となり、繁忙月の車両確保も困難になっている。これらに加えて物流コスト上昇、安全性向上や環境への配慮、幹線輸送の積載の効率化などの課題がある。
解決策となるのは、荷物混載やドライバー1人当たりの輸送力の向上がある。また、後続車両が無人運転となる隊列走行もこうした課題への解決に向けて実用化が期待されている。
隊列走行の実用化に向けた現実的な課題
荒木氏は隊列走行の実現可能性について「自動運転といっても、先頭車両の後ろに付いていく隊列走行はそれほど難しくはない。先頭車両はドライバーがいて、2〜3台目は無人となる。隊列がそれ以上の台数になると追い越しで支障を来すので危険性が生まれる。一般の走行車線で、普通のスピードで走れば問題はない」としている。
隊列走行の実用化に向けては物流各社の連携が必要になる。荒木氏も複数の物流企業による運用を想定している。複数企業が共同で運営するには、隊列走行技術の国内規格を統一することや、インフラの整備が欠かせない。
また、荒木氏は高速道路に隣接した場所に隊列走行車両のターミナルとなる物流拠点を設け、地元のトラックが荷物を引き取りに来る形を提案した。各社の既存の物流拠点と、隊列走行車両のターミナルを連携させ、物流業界で共有するプラットフォームとしたい考えだ。実現には、情報システムの確立や積み替え・混載のスキーム構築も重要になる。
技術的には実現のめどが立っているものの、実現に向けたインフラや法規制の整備については物流業者の立場では進捗が見えてこないのが現状だ。荒木氏は整備すべきポイントとして以下の項目を挙げた。
- 隊列走行の許可条件
- 社会インフラの費用負担
- 高速道路料金制度
- 一般車両と隊列走行車両の双方が安全に走行できる車線
隊列走行の効果を十分に創出するには、夜間など限定された時間帯のみの運行では難しい。需要の多い東京・名古屋・大阪の区間は昼間に4時間程度で折り返し運転が可能か検討が必要だとしている。
隊列走行による輸送を行う区間も検討すべきテーマだ。隊列走行が効果を上げるのは、物流需要の多い区間や、ドライバーが最も深刻な首都圏と九州や東北を結ぶ長距離区間になりそう。また、中小も含め複数企業が参加して輸送の中継など共同運営しやすい区間であることも条件に挙げている。道路障害や非常事態が発生した場合の代替路線の確保も必要だとしている。
将来的には、先頭車両の自動運転化や自走可能なコンテナの連結、隊列走行車両のターミナルでの荷物の積み下ろし自動化なども目標に入れている。さらに、トラック輸送に用いる車両の少なくとも50%程度を隊列走行車両に切り替えていきたい考えだ。
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