リサイクル材の活用へ、トヨタが自ら古着やペットボトルを回収:人とくるまのテクノロジー展2025(2/2 ページ)
自動車向けに使うものであっても、リサイクル材の“原料”の回収は自動車業界とは離れたところで行われるのが一般的だ。しかし、トヨタ自動車は自社で使うリサイクル材を安定的に確保するため、古着やペットボトルの回収にも乗り出している。
トヨタ自動車は防音部品に使う反毛は地域ごとに調達するため、海外の生産拠点では現地のアパレルメーカーで製造時に発生した端材を回収して防音部品の原料にしている。今後は海外も日本と同様に古着を確保しながら古着由来の反毛を防音部品に使用していきたい考えだ。
日本ではリユース/リサイクルされない古着は焼却処分されているが、海外(特に新興国)ではそうした古着をリサイクル/廃棄する環境が十分に整っておらず、処分に困った末に海洋投棄される例もあるという。
慈善事業として国外に寄付されたり安く販売されたりした古着にリユースできないものが多く含まれているのは、それを受け入れる地域にとって大きな負担になる。古着が発生した地域でリユースできるかどうかをきめ細かく選別し、リユースできないものはより多くリサイクルに回していくことが重要だ。
従業員が捨てるペットボトルを回収、歩留まり向上も重視
トヨタ自動車の人気車種「ランドクルーザー250」のシートには、トヨタ自動車の国内拠点で回収したペットボトルをリサイクルしたポリエステルが使われている。ペットボトルの価格高騰や供給量の確保が課題になっていることを受けて、自社回収に乗り出した。
トヨタ自動車では国内で7万人が働いており、1日に捨てられるペットボトルは1万本に上る。シート1脚に必要なポリエステルは500mlのペットボトル3本で作ることができ、7人乗りのシートならペットボトル21本でまかなえる。6トンのペットボトルで、ランドクルーザーの月間生産台数分をカバーできるという。ただ、他の車種の生産量までまかなうにはさらに多くのペットボトルが必要になる。
自社回収に当たって、回収するペットボトルの品質を重視した。一人一人にラベルやキャップを外してもらい、中を水で洗ってからペットボトルをつぶすなど協力を仰いだ(当然、ペットボトルのみを回収できるよう他のごみとは分別する)。
回収したペットボトルは協力会社の下でフレークにした後、加工してポリエステルの糸になる。色がついている部分やポリエステルにならない部分が透明なペットボトルとともに混入すると、ポリエステルの糸としての強度や色などの品質が低下するのが課題だったが、ペットボトルを捨てる一人一人の協力によってフレークの時点での歩留まりは従来と比べて6.4ポイント改善して86.4%になった。
ポリエステルは使用済み車両のシートからも回収できるが、意匠で着色されているため再生時の選別にコストがかかるのが現状だ。こうした課題も解決しながら、ペットボトル以外にもポリエステルのリサイクル材を確保したい考えだ。
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