ホンダが「2030年度まで10兆円投資」の計画から3兆円減、その内訳は:電動化(2/2 ページ)
ホンダは事業戦略説明会を開き、四輪車の電動化戦略の軌道修正など最新の方針を発表した。2024年にホンダは電動化戦略に関連して2021〜2030年度の10年間累計で10兆円を投資する計画を公表したが、3兆円減の7兆円に見直す。
北米向けに大型HEVも用意
HEVとEVは、独自開発の次世代ADAS(先進運転支援システム)を中心とする知能化で競争力を高めるとともに、パートナー企業との協業も活用して新たな価値の創造にも取り組む。自動化の分野は、この次世代ADASと、「0シリーズ」に搭載するレベル3の自動運転の2本柱だ。
次世代ADASは、カーナビで目的地を設定すると、一般道/高速道路を問わず目的地までの全経路で運転操作を支援する。交通参加者が多様で交差点での右左折が頻繁に発生する市街地への対応では、自動運転システムの開発で培った認識技術や行動計画技術を生かす。
この次世代ADASは2027年ごろに北米や日本で投入するEVやHEVの主力ラインアップに幅広く展開していく。複数の主力車種に同時に搭載できるよう、開発手法が進化しているという。EVだけでなくHEVにも搭載することでスケールメリットを創出し、商品競争力とコスト低減を両立する狙いだ。
なお、中国では現地企業Momentaとの共同開発により、中国の道路環境にあった次世代ADASを中国で販売する全ての新型車に搭載する。
次世代ADASは消費電力の増加やSoC(System on Chip)の冷却などが課題になるが、HEVでも高効率なエネルギーマネジメントを緻密に実行することで対応できる見込みだ。また、ホンダ独自の「M・M(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想」により、次世代ADASの関連デバイスを小型車にも搭載していく。
2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」は、2027年から4年間で13モデルをグローバルで投入する。小型/中型車向けのシステムは販売台数の増加に合わせて2018年モデルに対して50%以上、現行の2023年モデルに対して30%以上のコスト低減を目指す。これらのモデルには次世代ADASなどSDVとしての付加価値も搭載する。
バッテリーやモーターなどの主要部品を中心に、仕入れ先との共創活動や生産の効率化、部品共用化を進める。操縦安定性などの進化と軽量化を両立する次世代プラットフォームと、高精度で応答性の高いモーター制御による新開発の電動AWD(全輪駆動)を組み合わせることで、走りを磨きながら10%以上の燃費改善を目指す。
大型車のニーズが高い北米には、2020年代後半の商品投入を目標に大型車向けのハイブリッドシステムを開発する。力強い走行性能やけん引性能と環境性能を両立する。
「EVか、HEVか」に左右されにくい生産体制へ
パワートレインごとの需要の変動や各国の政策などに左右されにくい、レジリエントなサプライチェーンを構築していく。EVの普及スピードが変動する時期はEVとHEVの混流生産ラインを軸に、最適に作り分ける柔軟な生産体制とする。バッテリーを中心とする電動系部品の確保には、既存アセットの最大活用を含めて供給能力やアロケーションの最適化を図る。工場間での生産モデルの移管をスピーディーに行う体制づくりなど、これまでに強化してきた取り組みも変動への対応に貢献する。
三部氏は「2050年にカーボンニュートラル達成、(自動車の使用期間が10年程度であると想定して)2040年にカーボンニュートラルな新車のみにするという最終的な目標を動かす気は全くない。2030年時点でEVに関しては当初の目標よりも後退した数字になるが、何年に何パーセントという数字を出すのはもうあまり意味がないのではないか。2030年以降のマイルストーンも、グローバルで動向を見ながら見直していく」とコメントした。
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