ホンダは2024年5月16日、電動化に向けた取り組みの方向性と財務戦略について発表した。
同社は、EV(電気自動車)が二輪や四輪などの小型モビリティの電動化に最も有効なソリューションであると位置付けている。一方、航空機や船舶など大型のモビリティでは航続距離を確保するためSAF(Sustainable Aviation Fuels、持続可能な航空燃料)やe-fuel(合成燃料)が有望視されるなど、多様なソリューションへの対応が必要だとみている。
ホンダは2040年にグローバルでのEVとFCV(燃料電池車)を合わせた販売比率を100%とする目標は維持する。これに向けて2030年にはグローバルでEVとFCVを合わせた販売比率を40%に引き上げ、200万台以上のEVを生産する計画だ。実現のため2021〜2030年度の10年間累計で、電動化やソフトウェアの領域に10兆円を投資する。また、2030年にはEV事業として売上高営業利益率(ROS)5%の達成を目指す。EV事業の自立化に向けて利益率を高める。
EVの利益率を確保するに当たって、ホンダらしさを追求してEVの魅力を向上させること、バッテリーを中心としたEVの包括的バリューチェーンを構築すること、生産技術や工場を進化させることを重点領域とする。足元のEV市場の状況変化にとらわれすぎず、2020年代後半以降にEV普及期が来ることを見据えて中長期的な視野で取り組むとしている。
黎明期、移行期、普及期に分けた展望
バッテリーを中心としたEVの垂直統合型バリューチェーンの構築により、北米で調達するバッテリーコストを現行バッテリー比で2030年に20%以上削減する他、生産コストの35%削減を目指し競争力のある事業構造を構築する。2030年の生産目標とする200万台分のEVをまかなうバッテリーを確保する見通しだ。
2030年に向けてEVの黎明期(2020年代前半)/移行期(2020年代中盤)/普及期(2020年代後半以降)のフェーズを設定し、それぞれのフェーズでバッテリーの安定調達に取り組む。黎明期(2020年代前半)は、地域ごとに液系リチウムイオン電池の外部パートナーシップを強化し、必要なバッテリー量をコストを抑制しながら安定的に調達する。
移行期(2020年代中盤)は、パートナー企業との合弁によるバッテリー生産が始まる。米国では、2025年にLGエナジーソリューションとの合弁によるバッテリー工場が稼働を開始し、年間40GWhのバッテリーを生産する。高密度なパッケージング技術により生産される軽量かつコンパクトなバッテリーパックが、グローバルモデルである「0シリーズ」に搭載され、商品力の強化に寄与する。車両の生産にとどまらず、充電サービス領域やエネルギーサービス、リユース、リサイクルといったライフサイクルビジネスにも事業領域を拡大し、自前の範囲を広げていくことで安定した事業基盤を確立する。
普及期(2020年代後半以降)は、さらに事業領域を広げ、原材料の調達から完成車生産、バッテリーの二次利用、リサイクルまで含めたバッテリー中心のEVの垂直統合型バリューチェーンの構築も目指す。これに関連して、カナダではGSユアサとの共同開発バッテリーの自前生産に乗り出す。主要部材についても、正極材はPOSCO Future Mと、セパレーターは旭化成とのそれぞれの共同出資でカナダに新工場を設ける。バッテリー価格の最適化や安定調達だけでなく、バリューチェーン全体での競争力を磨く。
こうした取り組みにより、2030年に北米で調達するバッテリーのコストを現行のバッテリーから20%以上削減する。2030年の生産目標とするEV200万台分のバッテリーについては、地域ごとに最適な方法で確保する見通しが立っているという。
EVのラインアップ拡充
2024年1月の「CES 2024」で披露したEVのグローバルモデル「0シリーズ」は、2030年までに小型から中大型モデルまで、全世界で7モデルを投入する。その中でフラグシップモデルとなる「SALOON」は、コンセプトモデルにかなり近い形で2026年に市場投入する計画だ。
中国では独自展開のEVを2027年までに10機種投入し、2035年までにEV販売比率を100%とする。現在展開している「e:Nシリーズ」に加えて「ye(イエ)シリーズ」を発表するなどラインアップを拡充している。
可搬型でモビリティなどの本体から取り外して交換できるリチウムイオン電池「モバイルパワーパック」を活用した電動モビリティも展開する。まず、2024年にモバイルパワーパックを2個搭載する二輪電動モビリティを投入。2025年度中にはモバイルパワーパックを4個搭載する超小型モビリティを日本へ投入する。
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