ハイブリッド車も進化
HEV(ハイブリッド車)も進化させ、グローバル展開する。HEVを含めたエンジン車の事業体質を強化することで着実に収益を確保し、創出した原資をEVを始めとする新事業に投入する。
2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」とそのプラットフォームを刷新する。システムの軽量化と高効率化、プラットフォーム効率化や共用化により、さらなる燃費の改善と走りの質感向上を高次元で両立するとしている。EV開発の技術を応用し、EVに搭載するモーターを活用した電動四駆も採用する。機械式の四駆と比べた最大駆動力の向上や高応答/高精度な駆動力配分制御を実現する。モーションマネジメントシステムとの協調制御により、車両挙動を安定させながら運動性能を向上させ、安心と運転の楽しみを両立する。
生産技術や工場の取り組み
エンジン車からEVへ移行する2020年代半ばまでの期間は、需要や環境の変化に柔軟に対応しながら、収益を確実に確保するため、既存の生産設備を最大限活用してエンジン車とEVの混流生産で対応していく。0シリーズの特徴でもある「Thin, Light, and Wise」の実現に必要な先進技術を着実に取り込み、将来のEV専用工場での高効率な生産体質の構築につなげる。
EV向け薄型バッテリーパックの製造では、米国オハイオ州のアンナ工場に新しく設置するバッテリーケースの製造ラインに6000トンクラスの高圧ダイカストマシンを導入する。これにより、60点を超えるバッテリーケースの構成部品数や付帯部品数を5点に大きく削減できる見込みだ。また、摩擦攪拌接合(FSW)を組み合わせることで、投資の抑制と生産効率の向上を両立する。
現在、栃木県の生産技術の研究拠点に6000トンクラスの高圧ダイカストマシンを導入し、量産性の検証を進めている。将来はアルミ鋳造の大物部品をボディー骨格部品に適用するなど、鋳造技術を継続的に進化させるという。
バッテリーパックの組み立てには、独自の「フレックスセル生産システム」を先行で取り入れる。モジュール化した部品構成とセル生産方式を組み合わせ、生産機種の変更や生産量の変動にフレキシブルに対応できるようにしていく。また、現実の生産ラインの状況をリアルタイムにサイバー空間で再現するデジタルツインを活用することで、工場への部品供給や、生産量、スピードなどを最適化し、市場のニーズに合わせたタイムリーな商品供給を実現する。将来的にはフレックスセル生産システムの適用範囲をさらに拡大し、バッテリーパックの製造だけではなくEV生産の全ラインに展開する。
これらの生産技術は2028年に稼働を開始するカナダのEV専用工場において完成形となる予定だ。大幅な稼働率の向上、固定費の削減など、高い生産効率を実現することで、従来の混流生産ラインと比較して約35%の生産コスト削減を目指す。
リアルタイムデータの連動によるオペレーションの進化
商品の企画から販売後のアフターサービスまでのオペレーションを一括してソフトウェアで連携させることにも取り組む。販売現場で得られる市場動向や嗜好のデータをリアルタイムで開発や生産の現場にフィードバックして、ユーザーや市場のニーズに最適な商品を提供したり、コネクテッド機能によって得られる車両のリアルタイムデータを基に最適なアフターサービスのメニューを立案し、専用アプリからリアルタイムに提案したりする。
これらの例だけでなく、バリューチェーン全体で常に最新のデータと連動することで、市場の激しい変化に迅速かつ柔軟に対応できる体制を構築する。また、ソフトウェアデファインドモビリティでリアルタイムに得られるデータを活用し、さまざまな場面でユーザー一人一人に寄り添った商品や体験価値を提供していく。
10兆円投資の展望
EVの本格普及期となる2030年度までの10年間で、約10兆円の資源投入を計画している。内訳は、ソフトウェアデファインドモビリティ実現に向けた研究開発支出として2兆円、米国やカナダ、日本などでのEVの包括的バリューチェーン構築に関わる投資や出資などで2兆円だ。また、次世代のEV専用工場を含む生産領域、二輪の電動化、四輪の新機種開発、金型投資などモノづくり関連費用として、開発支出3兆円、投資や出資で3兆円を投資する。
2021〜2025年度は、エンジン搭載製品の事業体質強化と、EVへの資源投入のフェーズと位置付ける。二輪事業や四輪のエンジン車(HEV含む)事業の体質強化により12兆円の営業キャッシュフローを創出。これを電動化や新領域に配分する。
2026〜2030年度はEVへの本格的な事業転換のフェーズとする。新興国を中心とした二輪事業の販売台数の拡大や、四輪のエンジン車(HEV含む)事業での継続的な体質向上により、2021〜2025年度と同等レベルのキャッシュを稼ぐ。EVの収益性向上や台数の拡大による営業キャッシュフローを上乗せし、さらなるキャッシュ創出を目指す。
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