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「必要な性能の半導体が欲しいときに入手できない」、企画力向上急ぐ車載電子部品(1/2 ページ)

自動車用先端SoC技術研究組合は新エネルギー・産業技術総合開発機構の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発(委託)」の公募に「先端SoCチップレットの研究開発」を提案し、採択されたと発表した。

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 自動車用先端SoC技術研究組合(ASRA)は2024年3月29日、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先端半導体製造技術の開発(委託)」の公募に「先端SoCチップレットの研究開発」を提案し、採択されたと発表した。経済産業省は2024年度予算として10億円を補助するという。

 NEDOに提案したテーマでは、自動車のさらなる知能化や電動化を支える車載ハイパフォーマンスコンピュータの実現に向けて、データセンターなどで実績があるチップレット技術を応用することを目指す。車載用に固有の安全性や信頼性を確保するため、機能安全やリアルタイム処理への対応、熱やノイズ、振動への対策などの課題解決に取り組む。

 自動車業界と半導体業界の共同研究体制によって必要な要素技術を確立し、これらの技術をベースとする先端SoCチップレットを2030年以降の自動車に量産適用することを目指す。

 処理性能や消費電力といった物理的な性能だけでなく、最終的に自動車の競争力や価値をどのように高められるかという観点でチップレット技術に取り組む。ただ、SoCを1つ設計するには数百億円規模の試験研究費が必要になる。

なぜチップレット技術に取り組むのか

 ASRAは2023年12月1日に設立された。理事長はトヨタ自動車 シニアフェローの山本圭司氏。参加企業はスズキと日立Astemoが新たに加わって14社となった。

参加企業一覧

  • 自動車メーカー:スズキ、SUBARU(スバル)、トヨタ自動車、日産自動車、ホンダ、マツダ
  • 電装部品メーカー:デンソー、パナソニック オートモーティブシステムズ、日立Astemo
  • 半導体関連企業:ソシオネクスト、日本ケイデンス・デザイン・システムズ、日本シノプシス、ミライズテクノロジーズ、ルネサス エレクトロニクス

 自動車の知能化や情報化、電動化を支える半導体。SoCは自動運転技術やAI(人工知能)エージェントなど今後の自動車の進化を担う重要な半導体であり、SoCの性能が自動車の性能に直結すると位置付けている。

 RapidusやJASMのように半導体のモノづくりを底上げする施策が展開されているが、自動車メーカーが必要とする先端半導体を実現するには、モノづくりだけでなく企画力や設計力が重要になるとみている。ASRAはその中で先端半導体の企画や開発、設計、標準化活動を強化する狙いで設立された。半導体のモノづくりと企画力、設計力を高めるそれぞれの取り組みが連動することで、日本の半導体産業の底上げにつなげたいという思いもある。


ASRA 理事長の山本圭司氏

 理事長の山本氏は「クルマ作りはこれまで機能や技術ごとに業界や企業で分担する水平分業が進められてきた。半導体が自動車の性能を左右するこれからの状況では、それぞれの機能や技術が効率的に連携し合い、1つのチームとして開発を進める必要がある。ASRAではそれぞれのステークホルダーの知恵を集めてオープンかつフェアな活動を進めていく」と抱負を述べた。

 また、自動車メーカーの立場として「ほしいタイミングで、ニーズに合った仕様や機能を持ったSoCを入手するのが難しくなってきている。オーバースペックだったり、性能が足りなかったり、車両の生産の立ち上げタイミングに間に合わなかったりする状況になりかけている。自動車メーカー主体で、必要なSoCを企画して開発したいという思いが強くなった」(山本氏)という危機感もある。

 ASRAで開発するのは“土台”の部分であり、そこで動作する機能は自動車メーカーごとの競争領域になる。「土台がしっかりしていないと、上に乗せる機能もうまくいかない。土台作りは協調領域だと各社が同意した」(山本氏)。

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