NTNの微細塗布装置が新たなバイオプリンティング方式として医療/創薬に貢献:3Dプリンタニュース
NTNが開発した「微細塗布装置」が新たなバイオプリンティング方式として、抗原検査をはじめとするライフサイエンス分野の研究活動に採用された。
NTNは2025年5月19日、同社が開発した「微細塗布装置」が新たなバイオプリンティング方式として、抗原検査をはじめとするライフサイエンス分野の研究活動に採用されたことを発表した。
高粘度/極少量の液剤を高速かつ高精度に塗布できる微細塗布装置の特長を生かし、同社は拡大するライフサイエンス市場への応用提案を進めるとともに、自社においても創薬分野での活用を見据えた研究開発に取り組んでいる。
微細塗布装置は、針の先端に付着させた数pL(ピコリットル)の液剤を、1回当たり0.1秒の速度、±15μm以下の繰り返し位置決め精度で塗布できる装置である。対象物に接触させて液剤を塗布する独自手法により、100Pa・s(パスカル秒)までの高粘度液剤でも目詰まりすることなく、安定かつ高速に塗布できる。
ライフサイエンス分野での採用事例
浜松医科大学 ナノスーツ開発研究分野が進める電子顕微鏡を用いた高感度抗原検査キットの研究開発において、微細塗布装置が採用された。
従来のイムノクロマト法による抗原検査では、体内の抗原が微量である場合、検査ライン(捕捉抗体)の発色が弱く、正確な判定が困難なケースがあった。
これに対し、同大学が開発を進める高感度抗原検査キットでは、電子顕微鏡により検出対象となる抗原の数を検出することで、陽性/陰性の判断を行う。1回の検査で複数の抗原を同時に検出できるため、抗原検査の感度向上に加え、診断の効率化や患者負担の軽減も期待されている。
微細塗布装置は、電子顕微鏡の非常に狭い観察視野内の特定領域に捕捉抗体を高精度に塗布する用途で採用されている。
創薬実験用細胞培養プレートの作製技術を開発
NTNは創薬分野への応用に向けた取り組みの一環として、大阪大学大学院 生命機能研究科との共同研究により、微細塗布装置を用いた細胞培養プレートの作製技術を開発した。
市販プレートに設けられた約100〜400個のへこみ(へこみ1個当たりのサイズ:直径3〜6mm×深さ10〜13mm)それぞれに対し、微細塗布装置でiPS心筋細胞を約1万個ずつ塗布することで、100件以上の創薬実験を同時に実施できるようになる。
微細塗布装置は、1mL当たり1億個もの細胞を含む高濃度液体を10pL単位で塗布することが可能だ。また、細胞への負荷を抑える塗布方法などによって、90%以上の細胞生存率を維持できる。これにより、使用する細胞数の削減と創薬実験のコスト低減に貢献する。
現在、微細塗布装置を用いて異なる種類の細胞組織を近接/接合して塗布し、臓器構造を模倣した模擬臓器の開発にも取り組んでおり、将来的にはより精度の高い創薬実験の実現を目指している。
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