マツダはEV専用工場を作らない、投資を抑えながら電動化黎明期に臨む:電動化(1/5 ページ)
マツダは電動化のマルチソリューションの具現化に向けた「ライトアセット戦略」を発表した。
マツダは2025年3月18日、電動化のマルチソリューションの具現化に向けた「ライトアセット戦略」を発表した。同社は2030年までを電動化の「黎明期」と位置付け、環境規制やニーズに柔軟に対応できるマルチソリューションで電動化を推進する計画だ。多様な商品や技術をタイムリーに開発/生産していくため、既存資産の活用度を高める。
マルチソリューションの例としては、欧米の厳しい排出規制に適合するエンジン「SKYACTIV-Z」や自社開発のEV(電気自動車)を2027年に導入する。これに向けて、モデルベース開発の適用拡大や、混流生産の柔軟性向上に取り組む。
電動車の普及は電池の生産などで大きな投資が必要になるものの、需要の不確実性が高い。マツダは“意志あるフォロワー(周囲を見て同じ選択をする)”のという方針の下、技術革新の進展を見極めながら慎重かつ合理的な投資を行う考えだ。
投資へのインフレ影響を打ち消す
マツダは2030年に向けて、電動化への準備(フェーズ1)/移行(フェーズ2)/本格展開(フェーズ3)の3つのフェーズで取り組んでいる。現在はフェーズ1を終えてフェーズ2に進む段階だ。フェーズ1はおおむね計画通りに進捗したとしているが、インフレによるコスト増加、地域ごとの電動化の進捗の違い、広がりつつある貿易戦争、経済安全保障、地政学的リスクなどさまざまな不確実性を抱えている。
そのような環境下でも経営リスクを抑えながら競争力を高めるためにライトアセット戦略を推進する。その一方で、サプライチェーンやバリューチェーンの最適化など構造的原価低減で1000億円、業務の選択と集中や投資の効率化、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進など生産性向上によって固定費を1000億円削減するなど、事業構造の改善活動も続ける。
ライトアセット戦略により、過去に発表した電動化計画よりも投資を抑えていく。例えば、2030年までの電動化投資額は2022年11月時点で1.5兆円と発表していたが、インフレの影響で2兆円規模に拡大する見込みになっていた。これを投資の最適化によって1.5兆円に抑制した。投資を抑えて高い資産効率を確保しながら競争力のある技術や商品を展開し、資本コストを上回るリターンを創出することを狙う。
投資抑制に寄与したのは電池関連の投資の最適化だ。電池は全て自前で調達する想定で、インフラ影響も加味すると投資が7500億円に上ると試算していた。共同開発のEVを中国や欧州、ASEANに導入するなどの施策が貢献し、山口県岩国市に建設する電池のモジュール/パック工場への投資を含めても当初の計画から投資を半減できる見通しだという(2030年時点のEV比率が25%、40万台の場合)。
電動パワートレインでは、広島県内に電動ユニットの生産ハブを育成する協業を推進している他、トヨタ自動車やデンソー、BluE Nexusとの協業によってE/EアーキテクチャやADAS(先進運転支援システム)、電動パワートレインなどの効率的な技術開発も進めている。
海外工場の強化も進めている。中国での新エネルギー車の開発/生産/輸出の推進、タイでは日本やグローバルサウス向けの小型SUVの新型車を年間10万台規模で生産するなどを計画している。
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