電波の進行方向を変える透明メタサーフェス屈折フィルムを開発:材料技術
京セラは電波の進行方向を所望の方向に変えることができる「透明メタサーフェス屈折フィルム」を開発した。
京セラは2025年2月25日、電波の進行方向を任意の方向に変えることができる「透明メタサーフェス屈折フィルム」を開発したと発表した。
透明メタサーフェス屈折フィルムの概要
透明メタサーフェス屈折フィルムは、独自の素子構造により、従来の基板タイプの屈折板と同様の高い電波屈折特性を維持したまま、フィルム型の形状を実現した。同フィルムは、接着層、メタマテリアル層、保護層から成り、厚みは約200μmに抑えている。これにより、特別な設置工事が不要で、窓やアクリルスタンドといった既存の構造面に貼り付けるだけで、電波の中継点としてサービスエリアを拡張できる。
メタマテリアル層内の導体には透明電極を使用し、可視光透過率の測定値を80%以上として、高い透明度を有する屈折フィルムを実現。これにより、貼り付け先の構造物のデザインに影響を与えずに取り付けられる。フレキシブルな特徴を生かして、曲面構造への設置も可能だ。
一般的に屈折フィルムや屈折板のサイズに比例して、電波の到達範囲は広がる。従来の基板タイプの屈折板は用途に合わせて任意のサイズに製造できるが、板状のため製造後のサイズ変更は困難だった。
一方、透明メタサーフェス屈折フィルムは、製造後でも希望のサイズにカットでき、並べて貼り付けることでサイズを模擬的に拡大することも可能だ。同フィルムの屈折角度は0〜60度の範囲から選べる。さらに、サイズや屈折角度が異なる同フィルムを組み合わせることで、多様なビーム設計が可能となり、柔軟な通信エリアの構築に貢献する。
5G電波を用いた試験の結果
京セラは屋内に設置されたミリ波(28GHz帯)の5G環境を用いて、屈折フィルムの効果を確認する試験を行った。試験では、基地局から見通しが得られず、受信電力が低い地点に端末を配置して、窓ガラスへ屈折フィルムを貼り付けた際の伝送速度を測定した。その結果、屈折フィルムの貼り付け前後でダウンリンクにおける伝送速度が最大で2.7倍に、アップリンクにおいては5.2倍に向上することを確かめた。
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