京セラは2017年5月2日、東京都内で2017年3月期(2016年度)の決算と事業方針について説明を行った。2018年3月期(2017年度)から新たに事業セグメントを組み換え、6分野での取り組みを進めていく。
京セラの2016年度の業績は、売上高が前年度比3.8%減の1兆4227億円、営業利益が同12.8%増の1045億円、税引前純利益が同5.3%減の1378億円、当期純利益が同4.8%減の1038億円となった。セグメント別では、売上高としてはファインセラミック部品関連事業と、半導体部品関連事業が成長したが、営業損益では電子デバイス関連事業と情報機器関連事業が成長した。
2017年度からは、あらためて事業セグメントを変更する。従来は製品ジャンルごとに「ファインセラミック部品関連事業」「半導体部品関連事業」「ファインセラミック応用品関連事業」「電子デバイス関連事業」「通信機器関連事業」「情報機器関連事業」「その他事業」という製品や機器にひもづく事業領域としてきた。2017年度からはこれを用途およびソリューション方向へと拡張する方針でセグメント名もこれに合わせる形に変更する。具体的には部品事業は「産業・自動車用部品」「半導体関連部品」「電子デバイス」とし、機器・システム事業は「コミュニケーション」「ドキュメントソリューション」「生活・環境」とする。
京セラでは2017年度から新社長として、谷本秀夫氏が就任。新たな経営方針として、「徹底した原価低減による既存事業の拡大」と「社内外との連携強化による新規事業の創出」を掲げる。既存事業拡大に向けては、プロセス改革による原価低減と、ロボットやITなどの活用によるスマート工場化で生産性を倍増させることを目指す。一方、新規事業創出については、技術面での社内シナジーの強化とM&Aによる外部リソースの活用を進めるとしている。
京セラ 代表取締役社長 谷本秀夫氏は「基本的な方向性としては原価低減と生産性向上により既存事業を強化しながら、新規事業創出を目指す。早期に売上高2兆円を実現したい」と方針について述べている。
半導体製造装置向けと自動車向け部品で拡大
各セグメント別を見てみると「産業・自動車用部品」セグメントでは、半導体製造装置向け部品の売上高拡大を進める方針。2017年4月には新たに米国ワシントン工場で新棟を稼働させ、生産能力を1.5倍に拡大した。新たな生産拠点や生産性改善などを進め、旺盛な需要を確保し2017年度は2016年度比で1.3倍の売上高を目指すとしている。
自動車向けでは、車載カメラモジュールと自動車産業向け切削工具で売上高の拡大を目指す。車載カメラは自動車1台当たりの搭載台数が大きく拡大しており、既存のリアビューカメラやサラウンドビューカメラの販売を拡大するとともに、先進運転支援システム(ADAS)向けなどで実用化を進めていく方針である。
SIGFOXの売上高100億円は2019年度頃に
「情報通信サービス」セグメントでは、子会社である京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が国内展開を行うIoT向け通信ネットワーク「SIGFOX」を核として取り組む※)。
※)関連記事:SIGFOXがもたらす革新、IoT通信料売り切りセンサーなどを展開へ
「SIGFOX」はIoTに特化したネットワークで、データ通信能力はそれほど高くないものの、低価格、省電力、長距離伝送が可能である点が特徴である。既に欧米を中心に32カ国で展開、2018年までに60カ国に増加する予定だという。日本ではKCCSが2016年10月以降、基地局の整備などを進め、2017年2月にサービスを開始。現状では、東京23区、川崎市、横浜市のほぼ半分、大阪市のほぼ全域をカバーしており、今後は2018年3月に主要36都市をカバーし、2018年3月に人口カバー率85%、2019年3月に99%を目指すとしている。谷本氏は「SIGFOXは通信量が少ない点も特徴であるので、すぐに売上高が伸びるというものではない。2019年度くらいをめどにまずは100億円の売上高を目指す」と述べている。
「ドキュメントソリューション」セグメントでは、高信頼性製品の開発やドキュメントBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)事業の強化などを進める他、新たに2017年7月に稼働させる三重玉城工場のトナー工場浸透で徹底した自動化を実現する計画。トナーコンテナの樹脂成形、組み立て、充填、梱包までを全自動化する。これにより生産性を従来比で20%向上させるという。
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