日本の製造業が共通して抱える課題と生きる道:再生請負人が見る製造業(8)(1/4 ページ)
企業再生請負人が製造業の各産業について、業界構造的な問題点と今後の指針を解説してきた本連載も今回で最終回を迎える。そこで今回は、これまで紹介してきた各業界の課題を振り返るとともに、日系製造業はどのようにして生き残るべきかという指針について解説する。
米国ゼネラルモーターズ(GM)や日本航空、ライブドアなど多くの企業再生を手掛けてきた企業再生のプロであるアリックスパートナーズが、製造業各業界の状況について解説する本連載。前回の「構造不況に陥る日系造船業は未来をどう切り開くべきか」までの7回は、各業界の抱える課題と対応策について示してきた。
最終回となる今回は、あらためてここまで紹介してきた各業界の課題を振り返るとともに、日系製造業共通の課題をあぶり出し、今後の「生きる道」の指針を紹介したい。
日系製造業6業界の課題
まずは、ここまで本連載で紹介してきた各業界の課題を振り返って見ていく。日本の製造業は、国内市場の成長鈍化やグローバル競争の激化により、「国内事業のさらなる効率性の改善」「海外への事業展開の推進による成長機会の獲得」「グローバルで一体化した事業運営体制の構築」といった3つのテーマへの対応を迫られているといえる。各業界課題の詳細についてはあらためて、連載の各回を振り返っていただければと思う。以下は、簡単に各業界の課題を紹介する。
エレクトロニクス業界における課題
日本のエレクトロニクス業界の課題は、かつての強みを失いつつあるB2C中心のビジネスモデルをどうするかという点だ。具体的には、B2C事業の中で強みを持つ分野への事業選択や、B2B事業への事業転換が必要である。そのためには、かつて米国アップルが行ったように、収益改善のためには「縮む勇気」と「成長のための集中的な資源配分」が必要である(関連記事:アップルにあって日系電機メーカーにないものは何か?)。
自動車部品業界における課題
部品メーカーの直接顧客となるOEM(完成車メーカー)がグローバル化を急速に推進する中で、日本の自動車部品メーカーは「競争のグローバル化への対応」「グローバル供給体制の構築」「従来の延長線上ではないコスト削減」などの課題に直面している。これらの環境変化に対応していくためには「従来の発想からの転換」と「聖域無きコスト削減努力」が必要となっている(関連記事:自動車部品メーカーに求められる“延長線上ではない改革”)。
化学業界における課題
日本の化学メーカーは、グローバルの競合との間における規模と収益力の格差が拡大し続ける状況に苦悩している。いくつかのグローバルプレーヤーは、高付加価値事業への思い切った事業シフトを行っているが、日本企業は総合化学メーカーとしての戦略を貫いているため、グローバルで勝ち抜ける特徴を打ち出し切れていない。同様の戦略を取っている競合が成功している鍵は、積極的に進める買収の迅速な事業統合とその後の事業効率の改善への取り組みであり、日本の化学メーカーも、M&Aによる総合力強化が求められている(関連記事:開く世界基準との収益性の差、日系化学メーカーが未来を切り開くのに必要なこと)。
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