開く世界基準との収益性の差、日系化学メーカーが未来を切り開くのに必要なこと:再生請負人が見る製造業(4)(1/3 ページ)
企業再生請負人が製造業の各産業について、業界構造的な問題点と今後の指針を解説する本連載。今回はグローバル競争が過熱する日系化学メーカーの現状と抱える問題点について解説する。
米国ゼネラルモーターズ(GM)や日本航空、ライブドアなど多くの企業再生を手掛けてきた企業再生のプロであるアリックスパートナーズが、企業再生の手法、製造業各業界の状況について解説する本連載。前回の「自動車部品メーカーに求められる“延長線上ではない改革”」では、自動車OEMメーカーの調達環境の変化に揺さぶられる自動車部品メーカーの現状について解説した。
今回は、今回はグローバル競争が過熱する、日系化学メーカーの現状と抱える問題点について解説する。
広がる世界との収益性の差
化学業界では1990年代後半から中東やアジアの新興勢力が台頭し、世界規模で激しい業界再編が続いている(図1)。本稿では総合化学企業を題材に、現在好調なグローバル企業の動きを踏まえつつ、日系企業が勝ち残るために求められることを解説する。
まず日系企業の現状をみてみよう。図2は、化学企業トップ3社の事業規模と収益性における、欧米と日系トップ3社の比較である。実は2000年から現在に至るまで、両者の事業規模の差はそれほど広がってはいない。日系企業も積極的な姿勢で規模の拡大を追及しており、実際に日系化学企業首位の三菱ケミカルグループは欧米トップの一角である米国デュポン(DuPont)と売上規模でほぼ並ぶまでになっている。しかしその一方で、収益性には大きな隔たりがあり、その差はむしろ拡大しているのが現状だ。
特に海外事業の収益性の差は深刻な課題である。2000年から現在までの間に、日系大手3社の海外売上高は0.8兆円(全体の22%)から3.5兆円(同48%)へと急拡大している。この急成長は積極的な事業展開が支えてきたといえるがそれに伴う収益性は確保できていない。むしろ収益性は低下傾向にあり、拡大した海外事業で十分な利益を得ることができないというジレンマを抱えている状況だ。海外市場での事業展開を拡大しつついかに収益化していくか。この問いに対する解答がなければ、今後ますます激化するグローバル競争に日系企業が勝ち残っていくのは難しいだろう。
それでは、現在好調なグローバル企業はどのような取り組みをしているのか。世界的な業界再編のうねりの中で長期間にわたり首位を維持しているドイツBASFを例として見てみよう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.