構造不況に陥る日系造船業は未来をどう切り開くべきか:再生請負人が見る製造業(7)(1/4 ページ)
企業再生請負人が製造業の各産業について、業界構造的な問題点と今後の指針を解説する本連載。今回は中国や韓国を中心としたグローバル競争が激化していることで構造的な不況にさらされている造船業を取り上げる。
米国ゼネラルモーターズ(GM)や日本航空、ライブドアなど多くの企業再生を手掛けてきた企業再生のプロであるアリックスパートナーズが、製造業各業界の状況について解説する本連載。前回の「日系航空機メーカーは、主戦場のアジアで勝ち残れるか?」では、航空機業界が抱える課題と今後の方向性を示した。
7回目を迎える今回は造船業について取り上げる。円高是正によって一息はついたものの、グローバル競争激化による根本的な構造不況を抜け出し切れていない造船業が今後どういう対策を取るべきなのかを解説する。
市場成長の中でも収益圧力にさらされる日系造船業
世界の新造船建造量は増加傾向が続いており、世界的にみると造船業は成長産業である。ただし、世界の新造船需要が6000万総トン程度であるのに対し、中国・韓国を中心とした大幅な設備投資により、現在の世界の新造船供給能力は1億総トンレベルに拡大しており、大幅な需給ギャップを抱えている。このため世界の造船各社は構造的に厳しい競争にさらされている(図1)。
輸出が全体の約8割を占める日系造船業はこの影響から逃れることができない。リーマンショックをきっかけとした需要の急落に円高による競争力の低下が重なった結果、国内において新造船の建造がなくなると危惧されたことは記憶に新しい。この問題は造船における「2014年問題」として注目を集めた。幸いにも、2012年末から円高が是正されたことなどにより競争力が回復し、一定の受注量を確保できたことからこの問題は乗り越えることができたものの、構造的に厳しい状況は依然として残されている(図2)。
一定の生産量が確保できたとはいえ、厳しい競争環境を背景として船価は依然として低迷している。このため造船各社の収益状況は厳しく、引続き収益力強化・競争力の維持に向けた取組みが必要だと考えられる(図3)。
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