日本の製造業が共通して抱える課題と生きる道:再生請負人が見る製造業(8)(2/4 ページ)
企業再生請負人が製造業の各産業について、業界構造的な問題点と今後の指針を解説してきた本連載も今回で最終回を迎える。そこで今回は、これまで紹介してきた各業界の課題を振り返るとともに、日系製造業はどのようにして生き残るべきかという指針について解説する。
工作機械業界における課題
工作機械メーカーは、これまで景気の変動の影響を大きく受けてきた。一部の大手を除いて、細分化されたニッチ市場に多くの中小メーカーが共存しているのが現状の構図だが、今後は合従連衡がより一層進み、景気動向に左右されづらい体質強化が必要となってくる。また、従来の延長線上ではない営業改革のような、これまでと異なる取り組みも求められている(関連記事:好況に沸く工作機械メーカーは盤石か!? 課題は営業力にあり)。
航空機業界における課題
日本の航空機関連メーカーは、これまではボーイングやエアバスといったOEM(航空機の完成品メーカー)に主要部品を供給するサプライヤーとしての位置付けだった。しかし、旺盛な航空機需要を背景に、三菱重工傘下の三菱航空機が展開する国産旅客機「MRJ」のように、新たなOEM参入への動きが活発化しつつあり、業界構造が変化している。ただ、開発・生産・販売・メンテナンスの各領域において、経験値の獲得やグローバル増産体制の構築などの課題を早急に解決する必要があり、M&Aなどによる体制強化が必須となっている(関連記事:日系航空機メーカーは、主戦場のアジアで勝ち残れるか?)。
造船業界における課題
造船業界は、航空機業界と正反対の構造不況に喘いでいる。グローバルでの需要量6000万総トンに対して、供給能力は1億総トンにまで拡大し、日本の造船メーカーも今まで以上に厳しい競争にさらされている。大幅な調達費や販売管理費の削減に加え、グローバルサプライチェーンの構築のような、これまでとは異なる取り組みによる競争力強化が必要とされている(関連記事:構造不況に陥る日系造船業は未来をどう切り開くべきか)。
以上が、これまでの連載の振り返りだが、共通していえることは、日本の製造業は今後ますます過酷なグローバル競争にさらされるため、そこで勝ち抜いていくためには、これまでの延長線上の改善では不十分であるということだ。そして、それらの企業が行うべき改善の方向性は明らかである。それは、グローバル体制の強化であり、M&Aを通じた規模拡大と効率性強化である。
しかし、多くの企業では、実行力不足により、その改革が進んでいない。その実行力不足の理由は、世界共通の経営管理におけるフレームワークの欠如と、人材の不足、の2点にあるといえる。以下で、グローバル体制に通用する経営管理のフレームワークである「8Mイノベーション」と「リーダー育成」について述べていきたい。
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