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好況に沸く工作機械メーカーは盤石か!? 課題は営業力にあり再生請負人が見る製造業(5)(1/3 ページ)

企業再生請負人が製造業の各産業について、業界構造的な問題点と今後の指針を解説する本連載。今回はリーマンショック前の勢いを取り戻しつつある日系工作機械メーカーの動向と課題について取り上げる。

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 米国ゼネラルモーターズ(GM)や日本航空、ライブドアなど多くの企業再生を手掛けてきた企業再生のプロであるアリックスパートナーズが、企業再生の手法、製造業各業界の状況について解説する本連載。前回の「開く世界基準との収益性の差、日系化学メーカーが未来を切り開くのに必要なこと」では、グローバル競争が過熱する日系化学メーカーの現状と抱える問題点について解説した。

 5回目を迎える今回はリーマンショック前の勢いを取り戻しつつある日系工作機械メーカーの動向と課題について取り上げる。まず工作機械のマクロ環境について整理をした上で、どのような景況下においても着実に収益を維持・改善させていくための手法について論じてみる。

リーマンショックの影響が残る工作機械市場

 工作機械市場は、2007年当時には1兆6千億円規模の市場規模だったが、リーマンショックを受け大きく市場が縮小した。その後少しずつ回復しつつはあるものの、いまだにピーク時とは大きな乖離(かいり)が見られる。この状況で、市場を牽引(けんいん)しているのは外需(海外市場)である。外需だけを見ると、リーマンショック前のそれと比較し大差ないレベルまで回復していることが見て取れる(図1)。

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図1:工作機械の内需外需別受注高推移(クリックで拡大)

 リーマンショック以前と現在の受注市場の変化を見てみよう(図2)。リーマンショック以前は(減少傾向にあったとはいえ)内需がまだ半分近くを占め、欧州および北米がそれに続く規模を保有していた。しかし、2013年になると内需が大きく後退。変わりに伸びてきたのが北米市場だ。これはオバマ政権が積極的に進めている米国企業における本国生産回帰が数字として表面化してきている結果だといえる(関連記事:実は穴場!? 製造業が米国に工場を設置すべき8つの理由とは)。

 また中国の代替市場としての東南アジアの成長も興味深い。工作機械輸出国トップスリーである日本、ドイツ、イタリアの中で歴史的に見ても東南アジアに最も近いのは物理的にも感情的にも日本であることは間違いなく、東南アジア市場がどこまで成長するかは日本企業としても非常に興味深いところであろう。

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図2:工作機械受注地域別構成比率の推移(クリックで拡大)

 さらに2014年10月15日に日本工作機械工業会が発表した工作機械受注額(確報値)によると、同年9月の受注額は1355億4800万円となりリーマンショック以降の最高値(単月)になったという。特に日本国内向け受注が前年同月比16.3%増の491億4000万円となったことは明るい話だ。国内の工作機械メーカーも今が稼ぎ時と盛り上がっていることだろう。

 工作機械市場はもともと景気動向に左右されやすい業界である。しかし、いつまでも景気動向に一喜一憂する経営を続けていては企業としての体力が持たない。特に工作機械は一部の大手を除いては細分化されたニッチ市場に対し多くの中小メーカーが共存する業界である(図3)。基礎体力(財政基盤と置き換えてもよい)の弱い中小メーカーにとって、景気動向の波を乗り切ることは簡単ではなく、また顧客ニーズに合わせて市場が細分化され、製品も特化されているため自社内での事業補完などが期待するのが難しいのが実情である。

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図3:国内工作機械メーカー概況(クリックで拡大)
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