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実は穴場!? 製造業が米国に工場を設置すべき8つの理由とはいまさら聞けない「工場立地」入門(3)(1/3 ページ)

長年生産管理を追求してきた筆者が、海外展開における「工場立地」の基準について解説する本連載。3回目となる今回は、製造業回帰の動きが目立つ米国の現状と可能性について解説する。

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 海外展開における「工場立地」の基準について解説する本連載。前回の『「工場立地」面から見たアジア各国の特性と課題』では、ASEAN諸国の工場立地における特性とリスクについて紹介した。3回目となる今回は、衰退が続く中小製造業の進出先として米国が持つ魅力について説明する。



中小製造業の衰退

 歴史を振り返ると「世界の工場」と呼ばれる生産集積地は、いくつかの変遷を遂げてきた。19世紀中頃、ある英国人経済学者が、繁栄する自国を「世界の工場」と呼んだ。しかし、20世紀に入ると、T型フォードでモータリゼーションの波を起こした米国が英国に取って替わる。その後、オイル・ショックを境に日本が「世界の工場」の役割を務めた。しかし、日本が不動産バブルで自滅すると、中国がその後を引き継いで「世界の工場」になった。

 蒸気エンジンで動力革命を起こした英国、フォード生産方式で大量・高速生産に成功し工場労働者を中産階級に引き上げた米国、自動化やトヨタ生産方式で圧倒的労働生産性を獲得した日本など、どの時代を見ても技術革新が「世界の工場」の座をもたらした。しかし、グローバリズム全盛の近年は「人口」が「世界の工場」を決めるようになり、少子高齢化が進む日本は、2010年に国内総生産(GDP)世界第2位の座を中国に明け渡した。経済協力開発機構(OECD)は、米国も16年に中国、60年にインドに抜かれると予測している。

 日本では、円高、東日本大震災、電力不足や料金上昇が、製造業の海外移転を加速したといわれている。けん引役の基幹工場が流出した地域は、下請け企業も縮小を余儀なくされた。結果としてその地域の経済の地盤沈下を引き起こしている。

 2013年は“アベノミクス”により円高是正が進んだが、期待したようなJカーブ効果(円安で一時的に貿易収支は悪化するがその後輸出が伸び成長するという効果)は現れず、2014年上半期は過去最大の貿易赤字を計上することとなった。全国各地の地場産業も内需の低迷、中国製品の流入が重なって衰退の一途だ。例えば、美濃焼産地の現状を見てみると、内需減少と輸入増加により急速な出荷減小となっている(図1)。もはや絶滅の危機にあるといっても過言ではない状況だ。一方、町工場が集積する蒲田、東大阪、三条燕も同じ苦境に立たされている。大企業だけでなく中小の製造業にとっても国内だけで生きていくのは難しい時代といえるだろう。

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図1:陶磁器産業の国内市場の現状。内需減少と輸入増加が同時に進行している(出典:岐阜県産業経済振興センター 「陶磁器産業」リポート)(クリックで拡大)

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