共同物流のハードルを下げる、ヤマトと富士通がマッチングサービス:物流のスマート化(2/2 ページ)
ヤマトホールディングス傘下のSustainable Shared Transportと富士通は共同輸配送システムを稼働させる。共同輸配送システムでは幹線輸送をベースに荷主企業と物流事業者をマッチングさせる。
宮城県から福岡県まで、今後はマルチモーダルも推進
SSTは宮城県から福岡県まで、大型トラック1日16便の運行とし、標準パレットスペース単位で利用できる幹線輸送を提供する。1台のトラックに複数社のパレットを載せ、短中距離のリレー輸送を行う。また、幹線拠点からの安定した定時運行を実現する。地域の物流事業者とも連携し、利用する荷主企業の要望に応じて域内配送も合わせて提供する。
料金は、「往路も復路も荷物が満タンの場合に比べると、パレット当たりでは割高になる」(SSTの高野氏)。ただ、積載率が半分程度のトラックであればそれほど割高ではなく、共同輸配送のハードルは下げられるとしている。
目的地に直行するチャーター便に対し、共同輸配送では中継地での所要時間が発生するが、定期輸送や効率化の面では利便性が向上されると見込む。また、物流のスタートが夜間に集中していることを平準化できる。
ヤマトホールディングスの長尾氏は「自社で貸し切るチャーター便より安く提供するのはビジネスが成立しないだろう。チャーター便をパレット単位で割るのに比べてプラスアルファで料金をいただくことになる。現時点は売り上げ目標などを掲げるタイミングではない。実際に動かし始めることで、われわれやユーザーに課題が見えてくるのではないか。それらに迅速に対処しながらよりよいものにしていくのが最初のフェーズだ」と述べた。
開始後は対象地域やダイヤの拡充に加えて、鉄道や船舶を含めたマルチモーダルも推進していく。2026年3月末をめどに大型トラックで80線便まで路線を拡大する計画だ。スタート時点では取り扱う温度帯は常温のみだが、さまざまな需要に応じて将来的にはチルドや冷凍での共同輸配送の提供も目指す。
今後は、SSTと富士通は業界の垣根を越えた持続可能なサプライチェーンの実現を目指す。ヤマトグループが持つ法人顧客約170万社、物流事業者3500社以上のネットワークの他、輸配送ネットワークやオペレーション構築のノウハウ、富士通が持つ製造や流通に関する業務の知見、システム構築のノウハウを組み合わせていく。
サプライチェーン全体の最適化や強靱化に貢献するため、商流情報や物流情報を連携するデジタル基盤を構築し、関連機関や団体のサービスプラットフォームとのデータ連携も推進していく。富士通としても、SSTの事業を通じて共同輸配送の運送や作業、保管にかかわる手段やアセットの最大化を目指すフィジカルインターネットの実現に貢献したい考えだ。
物流にかかわるステークホルダーと協調し、複数の分野のオープンプラットフォームと組み合わせながら、業種や業界を横断した幅広い課題解決に取り組んでいく。
荷主の行動変容を
富士通は、荷主としても共同輸配送を活用していく。
富士通 代表取締役社長の時田隆仁氏は「荷主としての行動変容が最重要だ。富士通はテクノロジーを提供するだけでなく、荷主としても参画する。効率的でサステナブルな仕組みをつくるには、大きな目的に向けた標準化がカギを握る。サプライチェーン全体をサステナブルにしていくという認識も共有したい。荷主としては融通がきくチャーター便を頼ってきたが、企業としては日本の労働やエネルギーなどの問題に責任も負っている。環境負荷に関しては報告義務もある。行動変容しなければ、経営として成り立たない。個別でやっていくチャレンジもあるが、仲間づくりによって大きな流れや価値観も変わっていくのではないか」とコメントした。
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