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物流2024年問題にどう立ち向かうべきか、3段階のアプローチで対策せよ物流のスマート化

「ITmedia Virtual EXPO 2023秋」の「スマートファクトリーEXPO」において、ローランド・ベルガーの小野塚征志氏が「物流の2024年問題にどう立ち向かうべきか」と題して行った講演について紹介する。

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 ITmedia Virtual EXPO実行委員会が主催し、アイティメディアが展開するMONOist、EE Times Japan、EDN Japan、BUILT、スマートジャパン、TechFactoryの6メディアが企画したオンライン展示会「ITmedia Virtual EXPO 2023秋」が2023年8月29日〜9月29日に開催された。本稿では、同イベントの「リテール&ロジスティクス サプライチェーンEXPO」において、ローランド・ベルガー パートナーの小野塚征志氏が「物流の2024年問題にどう立ち向かうべきか」と題して行った講演から抜粋して紹介する。

宅配が増えているのではなく、ドライバーが減っている

ローランド・ベルガーの小野塚征志氏
ローランド・ベルガーの小野塚征志氏 出所:ローランド・ベルガー

 このところ物流クライシスがテレビの報道番組でも取り上げられる機会が増えている。しかしそこで紹介されるのは大手宅配業者であり、あたかもEコマースや通販が増え、宅配が増加し、結果的に人手不足になっているという印象を視聴者に与えるものが少なくない。しかし、実態として国内物流の総量は、ここ数年ほとんど変わらず(2020年時点で47億トン)、若干減少傾向にある。

 それに対して、トラックドライバーとして働く人が毎年2%程度減っており(2020年時点で66万人)、この結果として人手不足が発生しているというのが現状だ。宅配が増えているから人手不足になっているのではなく、物量はほとんど変わっていないのにトラックドライバーが減っていることが物流クライシスの原因となっているのである。その結果として物流コストの上昇が起こっている。2000年を100とした場合、現在のB2Bの一般企業向けサービスの価格はほとんど変化がないが、トラック輸送は114となり、宅配便に至っては145と1.5倍近くに上がっている。ただし、トラック輸送全体に占める宅配の量は売り上げベースで15%、物量ベースでは約1.5%にすぎない。

 日本企業の国内売上高に占める物流費の割合は、規制緩和が進んだこともあり2003年から2019年までは5%以下で推移してきた。しかし、2021年が5.7%、2022年が5.3%となるなど、ここ3年間は5%を超える水準で推移している。そして、企業からすれば物流費の上昇分だけ利益が減ることになる。このように物流費の上昇は物流会社だけでなく、ほとんどの企業に影響を及ぼす。企業として物流費を今後どうコントロールしていくのかが大きな課題といえよう。

「見える化」「変革の実行」「仕組みの構築」で物流を自律的に最適化

 そこに、2024年問題が重なってくる。2024年問題とはいわゆる「働き方改革」がトラックドライバーにも適用され、働ける時間がこれまでよりも短くなるものだ。このままの状態でいけば、日本の物流量の約14%分が2024年4月以降運べなくなるという試算がある。この14%分について対策を打たなければならない。さらに、ドライバーの数は、今後も減っていくとみられるため、2030年時点では3割以上の荷物が運べなくなることが予想される。小野塚氏は「こうした理由から2024年以降も輸送能力の不足問題には対応し続けていく必要がある」と指摘する。

 対策としては、まず物流の現状の「見える化」がある。その上で、明確な「変革の実行」を実施し、やり方を変えることで、トラックドライバーが少なくても回れる、効率的な、最適な状態へと変革していく。その上で、効率的な状態を維持できる「仕組みの構築」を行う。これら3つが、基本的なアプローチとなる。

 まずは、物流が「どんぶり勘定」になっている企業も少なくないことから、収支の「見える化」を進めることが必要だ。案件ごと、製品種別ごと、顧客ごと、顧客ごと、地域ごとなど、領域に分けて収支を見える化した上で、過去の実績や、他拠点/地域、他社との比較なども行い課題を抽出することが大切だ。現場がうすうす気づいていても、それが経営に反映されていないケース(昔からの慣習によるムダや、部分最適による非効率など)が明らかになることも多い。発荷主と着荷主、物流会社との関係性を踏まえて課題の真因を探ることが望まれる。

 「変革の実行」には幾つかの重要なポイントがある。その1つは、配送効率を高める上で着荷主の理解を得ることだ。これは、営業担当の言う「顧客の声」をうのみにしないということが大切だ。もう1つは、競合他社と連携することで輸送費を削減する「共同物流」の検討が上げられる。多くの企業にとっては本来協調領域かもしれない物流を、互いの連携で最適化することも手法の一つだ。さらに、出荷量や発注量を減らしたり、輸送距離を短くしたりすることで物流費を下げることもでき、CO2排出量の削減にも貢献できる。

 そして、物流費を一時的に削減できてもリバウンドしては意味がなく、物流を自律的に最適化する「仕組みの構築」が必要となる。それを実施するためには「見える化」を起点としてPDCAサイクルが回るようにすることが重要だ。これらの他、物流の最適化に対して荷主と物流会社の双方にインセンティブのある契約を締結することも一手段に上げられる。この契約により、自律的改善を長期持続的に促進することにもつながる。

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