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光電融合やカーボンリサイクルなど将来技術で市場を切り開く三菱電機の研究戦略製造マネジメントニュース(2/2 ページ)

三菱電機は、研究開発戦略について発表。中心となるコンポーネントでの技術力を基軸としつつ、AIや自律制御などのデジタル技術を組み合わせることで新たな価値創出に取り組む。また、将来に向けた「フォアサイトテクノロジー」として「光電融合技術」「カーボンリサイクル技術」「量子技術」を強化する。

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未来を作るフォアサイトテクノロジー

 将来性を見据えて開発を進めるフォアサイトテクノロジーとしては、光電融合技術、カーボンリサイクル技術、量子技術などを中心に取り組みを進める。

 光電融合技術は、従来電気配線で行っていた機器内の通信を光接続に置き換える技術だ。回路の高速化と省電力化を実現する。電力消費が大幅に増えているデータセンター内の機器などでの採用を期待しているという。三菱電機では、化合物半導体とシリコンフォトニクスの双方で高密度集積技術を保有しており、化合物半導体の高効率発光や、高速変調とシリコンフォトニクスの低コスト高集積を融合させたデバイスなどで力を発揮するとしている。また、化合物半導体では、EML(Electro-absorption Modulator integrated Laser diode)チップ開発で培った高速大容量化技術なども活用していくという。

 佐藤氏は「光電融合パッケージの市場規模は非常に大きくなると期待している。調査によっては2025年時点でも150億円程度の市場規模になるとされており、さらに2035年には1.9兆円の規模になるとの予測もある。これらの成長を捉えるためにしっかりと研究開発を進めていく」と考えを述べる。

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将来性が期待される光電融合技術[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 カーボンリサイクル技術については、CO2を資源に液体合成燃料として再利用できる技術だ。三菱電機では、電力制御やビル空調冷熱制御、プラント監視制御など、コンポーネントとシステムを連携したEMS(Energy Management System)に関する技術実績とノウハウを保有し、さらに高効率に液体合成燃料を製造できるSOEC(Solid Oxide Electrolysis Cell)共電解の実用化を推進。液体合成燃料の課題である製造コスト低減への貢献を目指している。

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カーボンリサイクル技術[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 量子技術については、スケーラブルな量子情報処理を実現する量子制御システム技術と、耐量子計算機暗号の研究開発を推進する。もつれ状態の共有に必要な光子の高精度同期に必要となる高出力レーザーや、FTTHで実績のある光位相制御やタイミング制御などの技術を持ち、複数の量子コンピュータ間で、ネットワークを介してもつれ状態を共有することで、計算や計測の高性能化や安定稼働に貢献する。また、耐量子計算機暗号に関しても国家プロジェクトへの参画などを通じて、継続的な研究を行っているという。

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量子技術[クリックで拡大] 出所:三菱電機

研究開発投資も継続的に強化

 これらの開発を進めるため、研究開発投資も継続的に強化していく。研究開発投資額は年々増加しており、2024年度は2350億円を予定しているが、さらに拡大する。また、フォアサイトテクノロジーの開発などには外部リソースの活用が重要になるが、産学官連携の強化を進め、従来は2030年度までに600億円の予算を見込んでいたが、1000億円規模の投資に拡大する。スタートアップ連携についても強化を進める。

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研究開発投資も拡大[クリックで拡大] 出所:三菱電機

 さらに、知財戦略についても重点分野に傾斜をかけて強化を進めている。従来もパワーエレクトロニクスやメカトロニクス、空調/冷熱、センシングなどのコンポーネント領域では特許件数は世界1位の保有数(三菱電機調べ)となっているが、AI/生成AIに関する特許比率は、2000年度が3%だったのに対し、2025年度は15%まで伸ばす計画だ。さらに、ソリューションに関する特許件数は2000年度が10%だったのに対し、2025年度は30%まで拡大する。

 三菱電機では従来、組織間の縦割り構造が強く、研究開発についても、分野間連携が起こりにくい状況があったが、佐藤氏は「縦割り構造がかつて強かった面があるのは事実だが、事業としてもそれらを解消すべく、関連性の高い事業本部を組み合わせたビジネスエリア制を採用し、その中での連携などが進んできた。また、コーポレート部門でDX(デジタルトランスフォーメーション)やAIについては横ぐしで連携して進める組織体なども生まれている。研究開発でもそういう枠組みの中で、技術戦略委員会などで合意を取りながら、トップダウンで横連携を進めていく」との考えを示している。

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