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三菱電機のAI技術「Maisart」は「大手クラウドベンダーとは一味違う」人工知能ニュース

三菱電機は、情報技術総合研究所とデザイン研究所の報道陣向け視察会において、AI(人工知能)技術「Maisart」について説明した。

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 三菱電機は2018年11月30日、情報技術総合研究所とデザイン研究所(両所とも神奈川鎌倉市)の報道陣向け視察会において、AI(人工知能)技術「Maisart」について説明した。

三菱電機の三嶋英俊氏
三菱電機の三嶋英俊氏

 Maisartは、Mitsubishi Electric AI creates the State-of-the-ART in technologyの略で「全てのAIをスマートにする、AIとSmartのアナグラムにもなっている」(三菱電機 情報技術総合研究所 メディアインテリジェンス技術部門 統轄の三嶋英俊氏)。同社は深層学習(ディープラーニング)などの登場によって一気に開発が加速し始めた、ビッグデータを基にする「データドリブン型のAI」(三嶋氏)に対して、データ源流近傍の組み込み機器で有効に活用できる「コンパクトな人工知能」を2016年2月に発表している。

 その後、深層学習の高速学習アルゴリズムや自動設計アルゴリズムなどを開発し(2016年10月)、2017年5月に機器やエッジをスマート化するAI技術のブランドとして発表したのがMaisartになる。三嶋氏は「この『コンパクトな人工知能』は大手クラウドベンダーとは一味違うAIの技術戦略であり、これらの技術は既にビジネス展開が始まっている」と語る。

「Maisart」の概要
「Maisart」の概要(クリックで拡大) 出典:三菱電機

 その上で三嶋氏は、MaisartのAIとして際立った技術を3つ紹介した。1つ目は「アルゴリズムのコンパクト化」である。人間の脳のニューロンやシナプス結合を模した深層学習のニューラルネットワークは、極めて多くの分岐が多層に積み重なった結果として認識や分析、判断といった結果を出力する。深層学習のアルゴリズムを実行する場合、これらの多くの分岐を扱うために大きな演算量を必要になってしまう。そこで、これらの多数の分岐についてデータの特徴を分析して重要な枝だけを残すことで、演算量を大幅に削減できるのがアルゴリズムのコンパクト化である。

「Maisart」の「アルゴリズムのコンパクト化」
「Maisart」の「アルゴリズムのコンパクト化」(クリックで拡大) 出典:三菱電機

 2つ目の「機器の知見を活用した強化学習の効率化」は、強化学習の学習時間を短縮する技術だ。行動に対する報酬を最大化する方法を試行錯誤しながら学習する強化学習では、報酬の与え方によって学習時間が左右される。場合によっては学習がうまく収束せず発散することもある。三菱電機では、機器に関する知見に基づく、制御結果の成功度合いを評価する「強化学習評価モジュール」を取り入れることで、学習時間の短縮に成功した。

「Maisart」の「機器の知見を活用した強化学習の効率化」
「Maisart」の「機器の知見を活用した強化学習の効率化」(クリックで拡大) 出典:三菱電機

 3つ目は「機器の知見を活用した時系列データ分析の効率化」だ。正常時のセンサー出力から部分列を分割した上で学習し、クラスタとして分類することで、検知対象データと正常データを比較する際の計算量を削減できる。「波形の類似度を算出する時系列データ分析の手法であり、1点1点処理しないことが特徴だ」(三嶋氏)という。

「Maisart」の「機器の知見を活用した時系列データ分析の効率化」
「Maisart」の「機器の知見を活用した時系列データ分析の効率化」(クリックで拡大) 出典:三菱電機

 Maisartのビジネス展開事例としては、2018年11月に米国の「R&D 100 Awards」を受賞した三菱電機エンジニアリングの画像式水位計測装置「フィールドエッジ」を挙げた。フィールドエッジは、河道内の3Dデータと河川映像を連携させることで水位標がなくても概略水位計測が可能な製品。映像内の水域部分と非水域部分をラベル付けした学習用データを用いてMaisartによる深層学習を行い、水域と非水域の境界を水際線として特定している。

「Maisart」を適用した製品「フィールドエッジ」
「Maisart」を適用した製品「フィールドエッジ」(クリックで拡大) 出典:三菱電機

 このように、組み込み機器やエッジで用いるAIの開発に注力してきた三菱電機だが、大手クラウドベンダーもグーグル(Google)やAWS(Amazon Web Services)がエッジで用いるAIチップを発表するなど、エッジ側のAI技術開発競争はより激しさを増している。三嶋氏は「そういった大手ベンダーの動きを敵視しているわけではなく、活用できるものは活用していきたい。また、われわれもエッジだけを目指しているわけではない。エッジで培った効率的なAIはクラウドをはじめさまざまなところで有効活用できるだろう」と述べている。

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