三菱電機の「コンパクトな人工知能」、FPGAへの実装も可能に:人工知能ニュース
三菱電機は小規模なFPGAにも実装できる「コンパクトなハードウェアAI」を発表。深層学習などによって得た推論アルゴリズムについて、従来と比べて処理速度を10倍、もしくはFPGAの回路規模を10分の1にすることができるという。
三菱電機は2018年2月14日、東京都内で開催した研究開発成果披露会において、小規模なFPGAにも実装できる「コンパクトなハードウェアAI」の展示を行った。深層学習(ディープラーニング)などによって得た推論アルゴリズムについて、処理速度を10倍、もしくはFPGAの回路規模を10分の1にすることができるという。
同社は2016年2月に、組み込みCPUで動作可能な「コンパクトな人工知能」を発表している。深層学習などによって得た推論アルゴリズムを、推論精度を維持しながら「Cortex-A7」クラスの組み込みCPUに実装できるようにする技術だ。
今回発表したコンパクトなハードウェアAIは、コンパクトな人工知能を組み込みCPUだけでなくFPGAにも実装できるようにしたものだ。「コンパクトな人工知能は、推論アルゴリズムにおけるニューラルネットワークの分岐の“枝”を落として、推論処理に必要な演算量と使用メモリ量を削減する技術だ。FPGAに実装する上でも“枝”を減らすことで、ニューラルネットワークの各層の間で演算の受け渡しをする次層ノード値演算機は小さくなる。しかし、メモリロードロジックは大きなままだった。そこで、計算順序の効率化/回路構成の最適化によって“枝”を規則的に残すことにより、メモリロードロジックの容量も削減できるようにした」(同社の説明員)という。
この技術を用いて推論アルゴリズムを同じ実装する場合、回路規模が同じFPGAであれば処理速度が10倍に、同じ処理速度であればFPGAの回路規模を10分の1にできる。
同社は、AI(人工知能)技術「Maisart(マイサート)」の1つとして、ソフトウェアベースとなる従来のコンパクトな人工知能をFA機器やネットワークカメラなどへの展開を予定している。今回のコンパクトなハードウェアAIについては、コスト面でAI(人工知能)の適用が難しかった家電やエレベーター、自動運転車の高精度地図などに適用していく方針だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 世界を変えるAI技術「ディープラーニング」が製造業にもたらすインパクト
人工知能やディープラーニングといった言葉が注目を集めていますが、それはITの世界だけにとどまるものではなく、製造業においても導入・検討されています。製造業にとって人工知能やディープラーニングがどのようなインパクトをもたらすか、解説します。 - いまさら聞けない FPGA入門
あなたは、人に「FPGA」を正しく説明できるだろうか? いまや常識となりつつあるFPGAについて、あらためてその概念から仕組み、最新動向までを解説する。(編集部) - ディープラーニングの事業活用を可能にする「ジェネラリスト」の重要性
AI技術として注目を集めるディープラーニング。ディープラーニングへの取り組みを進めていく上で必要とされる人材には「エンジニア」の他に「ジェネラリスト」も必要だ。本稿では、ディープラーニングの「ジェネラリスト」に何が求められるかについて解説する。 - 三菱電機がAIをブランド化、エッジの強みを強調
三菱電機は、同社が展開する人工知能(AI)技術ブランドを「Maisart(マイサート)」として展開する方針を示した。「コンパクトな人工知能」など現実的なAI活用を強調する。 - 三菱電機の人工知能は「エッジに賢くコンパクトに載せる」
三菱電機は、神奈川県鎌倉市に拠点を構える情報技術総合研究所とデザイン研究所の報道陣向け視察会を開催。情報技術総合研究所 所長の中川路哲男氏は、同社の人工知能(AI)の開発方針について「エッジに賢くコンパクトに載せる」と説明した。 - 「コンパクトな人工知能」実現へ、組み込み機器でディープラーニング
三菱電機がディープラーニングを組み込み機器単体でも実用可能なものとする手法を開発。自動車や産業用ロボット、監視カメラなどへの「人工知能」搭載を進める。