実用化段階に入るAI技術「Maisart」、三菱電機が研究開発成果を披露:製造マネジメントニュース
三菱電機が報道陣向けに研究開発成果披露会を開催。7件の新規発表を含めて20件の研究開発成果を公開した。20件のうち6件はAI技術「Maisart」関連であり、既に実用化段階に入っているという。
三菱電機は2018年2月14日、東京都内で報道陣向けに研究開発成果披露会を開催。7件の新規発表を含めて20件の研究開発成果を公開した。
同社 社長の柵山正樹氏は「当社は、創立100周年を迎える2020年度に売上高5兆円、営業利益率8%を目指しており、そのための設備投資を積極的に行っている。そして、持続的な成長に向けて、売上高や営業利益率だけでなく社会貢献も重要な目標になる。今回発表するさまざまな研究開発成果は、成長に加えて社会貢献にもつながるものだ。また、コンパクトを特徴とするAI(人工知能)技術『Maisart(マイサート)』の取り組みも強化しており、今回披露する20件のうち6件がMaisart関連になる」と語る。
三菱電機の研究開発は、短期、中期、長期をバランスよく推進していくのが基本方針だ。「まずは現在の事業の徹底強化をしっかりとやり、その上で技術シナジー・事業シナジーを通じたさらなる価値創出を図る。そして、10〜20年後の長期視点であるべき姿の実現に必要な未来技術の開発を進める。これらをしっかり支えるのが、技術を深化する共通基盤だ」(同社 常務執行役 開発本部長の藤田正弘氏)という。
2017年度の研究開発費は2120億円を予定しており、売上高比率は4.8%になる。2018年度もおおよそ売上高比率で5%の研究開発費を維持する方針だ。
三菱電機における研究開発の枠組みは、短期開発目標が短期になる事業本部からの依頼研究と、中期の先行開発、中期〜長期に達する基礎研究や産官学連携、全体を支える基盤研究で構成されている。藤田氏は「リソース配分は、短期が5、中期が3、長期が1、基盤が1という割合」と説明する。
企業の研究開発への関わりで注目を集めているオープンイノベーションについては、大学や研究機関との連携を強化している。2017年度の共同研究費は、2014年度比で3.3倍に伸びている。「特に、日本国内の大学・研究機関との連携を強化している」(藤田氏)という。
また、開発を注力しているAI技術のMaisartについては「演算量を減らして、搭載しやすくすることが特徴になる。今回の新規発表案件では、FPGAに実装しての高速処理も可能になっており、実用化段階に入ったといえるのではないか」(藤田氏)としている。
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