三菱電機が自社で取り組むスマートファクトリーの現在地:ESEC2017&IoT/M2M展(1/2 ページ)
「第6回 IoT/M2M展 春」の専門セミナーとして、三菱電機 名古屋製作所 オープンプラットフォーム・リードアーキテクトの楠和弘氏が登壇。三菱電機が考えるIoTを活用したモノづくりの姿を紹介した。
M2Mシステムを構築するための無線通信技術、センサーやさまざまなアプリケーションが一堂に集結する専門展「第6回 IoT/M2M展 春」(2017年5月10〜12日、東京ビッグサイト)の専門セミナーでは、三菱電機 名古屋製作所 オープンプラットフォーム・リードアーキテクトの楠和弘氏が講演。三菱電機が考えるIoTを活用したモノづくりソリューション「e-F@ctory」と、IoT活用を支えるプラットフォーム、また今後の方向性について、事例を含めて紹介した。
サイバーとフィジカルを結び付ける価値
現在、生産現場で起こっている現象として、何をしていいのか分からないにもかかわらず、IoTを導入することを目的としている傾向が見られるという。IoTを用いるには「目的」「誰のため」「コアコンピタンス」ということを整理しておかないと、手段として用いるべきIoTを目的化する間違った取り組みをしてしまうケースがあると楠氏は警鐘を鳴らす。
製造業の世界的な流れは、サイバーとフィジカルの結び付きをカギとする方向性へと進んでいる。物理的にモノを作る世界とサイバー空間とを密接に連携させることで、エンジニアリングにおけるバリューチェーンやサプライチェーンという時間を短くする進化が求められている。インダストリー4.0をはじめ世界各国で起こっている取り組みは、基本的に同じものだと楠氏は主張する。
これらの状況に先駆け、三菱電機では2003年からFA技術とIT技術を利用することで開発・生産・保守の全般にわたるトータルコストを削減し、生産現場の改善活動を継続して支援するとともに、一歩先のモノづくりを目指すソリューション提案であるFA統合ソリューション。「e-F@ctory」のコンセプトを提唱してきた。その成果の一例として、ある半導体メーカーで良品CPUをNGと判定してしまうミスを削減する取り組みを行い、センサーにより常時モニタリングを強化することで、年間900万ドルを削減したケースなどがある。
e-F@ctoryの考え方は「生産性、品質、環境性、安全性、セキュリティの向上を実現するために、企業のTOC削減と企業価値の向上を支援する」というものだ。具体的には、生産現場のデータをリアルタイムに収集し、FAで収集したデータを1次処理(エッジコンピューティング)し、ITシステムへシームレスに連携。そしてITシステムによる分析・解析結果を生産現場にフィードバックするという3層構造となっている。また、この取り組みは1社ではできないため機器・ソフトウェア・SIの各パートナーと連携しており、参加企業は400社に上っている。
三菱電機では、こうしたソリューションを自社工場である名古屋製作所に導入し、実際にその効果を実証してきた。同名古屋製作所は「月産50台の製品から同30万台の製品まで生産しており、それらの製品は当然、生産方式から部材、製造工程などの管理対象、発注状況などが違う。これらに対応できれば、世の中の製造業にそれなりに対応できる」(楠氏)と位置付ける。そのためのモデル工場としての役割も担ってきたという※)。
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