インダストリー4.0の10年先を行く、三菱電機が描くIoT時代のモノづくり:TECHNO-FRONTIER 2017(1/2 ページ)
「TECHNO-FRONTIER 2017(テクノフロンティア 2017)」の基調講演で、三菱電機 執行役員 FAシステム事業本部 副事業本部長の高橋俊哉氏が登壇。製造業のスマート化を実現する取り組みを紹介した。
要素技術の展示会「TECHNO-FRONTIER 2017(テクノフロンティア 2017)」(2017年4月19〜21日、千葉・幕張メッセ)の基調講演として、三菱電機 執行役員 FAシステム事業本部 副事業本部長の高橋俊哉氏が登壇。「三菱電機が考えるIoT時代のものづくりについて」をテーマに、同社が提唱するFA統合ソリューション「e-F@ctory」や2017年3月に発表したスマート工場の新たなエッジ領域の基盤「FA-ITオープンプラットフォーム」※)など製造業のスマート化を実現する取り組みを紹介した。
※)関連記事:ついに三菱電機がオープン化へ、スマート工場実現に導くエッジ基盤提供
2003年から展開している「e-F@ctory」
IoT(モノのインターネット)や分析技術の進展により、あらゆるモノやコトが人の状況や要因により最適化され提供される動きが加速している。工場においても、FAとITをつなぐためのデータ活用がポイントとなっている。これらに伴い、ICT(情報通信技術)をモノづくり現場で活用しようとする動きが進展してきた。サプライチェーンとエンジニアリングチェーンという2つのバリューチェーンを緊密に途切れなく構築するためにもIoTを含むICT活用は重要である。こうした製造業の改革はドイツの「インダストリー4.0」や米国を中心とした「IIC(インダストリアルインターネットコンソーシアム)」など、既に世界中で大きなうねりとして進んでいるものである。
三菱電機では長年にわたり製造業の自動化の発展を支えてきた実績がある。モノづくりの環境が大きく変化する中で、こうした技術をもとにFA技術とIT技術を利用することで開発・生産・保守の全般にわたるトータルコストを削減し、生産現場の改善活動を継続して支援するとともに、一歩先のモノづくりを目指すソリューション提案であるFA統合ソリューション「e-F@ctory」を2003年から提唱してきた。
現在もe-F@ctoryアライアンスパートナーとともに、顧客の課題解決に向けたトータルソリューションを提供する。e-F@ctoryの考え方について、高橋氏は「生産性、品質、環境性、安全性、セキュリティの向上を実現するために、企業のTCO(総所有コスト)削減と企業価値の向上を支援する」と説明する。
具体的には、生産現場のデータをリアルタイムに収集(見える化、可視化)し、FAで収集したデータを一次処理(エッジコンピューティング)する。さらにこれらのデータを、ITシステムへシームレスに連携(観える化、分析)させ、最終的にITシステムによる分析・解析結果を生産現場にフィードバック(診える化、改善)する。この3階層による生産現場の「みえる化3(キューブ)」と「使える化」により企業価値向上に取り組む。
IoT導入の本当の意味とは何か
講演では導入事例を挙げて詳しくその効果を紹介した。その1つが、三菱電機名古屋製作所※)に面実装稼働管理システムを導入し成果を上げた事例だ。
※)関連記事:三菱電機 名古屋製作所、FA機器快進撃の舞台裏
名古屋製作所はシーケンサ(PLC)やサーボモーターなどのFA製品を生産する工場である。これらはいずれも電子基板を内蔵した製品であり、その面実装システムを管理するためにe-F@ctoryを採用している。導入の目的は、ラインの停止ロスの発生に対して、不具合要因の分析時間を短縮する他、部品実装のミスによる品質ロスの発生を減少させ、稼働率の安定化を図る効果などを期待してのものだ。
「従来はベテラン社員がいて、不具合の理由や修理箇所が分かる場合が多かったが、今は改善する前に分析することに時間や人をとられてしまうことがある」(高橋氏)。しかし、e-F@ctoryを導入した結果、実装設備の稼働データ収集と分析・改善が図られ、生産性が30%アップしたという。また、部品レベルのロス分析と改善により品質ロスが50%ダウンするなどの成果が生まれた。
この他、導入事例としてベテラン作業員の減少に伴い、新人作業員の作業ミス防止や、作業のばらつきを防止する「ねじ締め作業システム」や、同製作所の省エネ化を目指した「エネルギー管理システム」の導入とその効果についても触れた。
高橋氏はこうしたシステム導入の成功事例と同時にIT、IoT導入時の注意点も披露している。「IT、IoTは手段であって目的ではない。効率の向上、品質の向上、費用の削減など導入の目的を明確にして、さらに誰のためにするのか、さらに価格、納期などコアをどこに置くのか、導入前にもう一度確認することが重要である」と指摘する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.