三菱電機は横ぐし強化、IoT基盤や横断組織を整備しスタートアップに100億円投資:製造マネジメントニュース
三菱電機は2020年6月1日、経営戦略説明会を開催。事業モデルの変革を訴え、IoT(モノのインターネット)基盤や横断組織の整備により、循環型ビジネスやデータ利活用ビジネス、プラットフォームビジネスなどの新たな事業モデルや新事業の創出に積極的に取り組む姿勢を示した。
三菱電機は2020年6月1日、オンラインでの経営戦略説明会を開催。事業モデルの変革を訴え、IoT(モノのインターネット)基盤や横断組織の整備により、循環型ビジネスやデータ利活用ビジネス、プラットフォームビジネスなどの新たな事業モデルや新事業の創出に積極的に取り組む姿勢を示した。
新型コロナの影響もあり2020年度成長目標は未達
三菱電機では2015年3月期(2014年度)に、2021年3月期(2020年度)の成長目標を発表しており、売上高5兆円以上、営業利益率8%以上の達成を目指してきた。しかし、米中貿易摩擦の影響で、FAおよび自動車機器事業を含む産業メカトロニクス部門が伸び悩んだ他、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が2020年度第2四半期まで大きな影響を及ぼすことから、目標を下回ることが確実となった。
三菱電機 執行役社長の杉山武史氏は「2020年度は第2四半期まで売上高と営業利益にCOVID-19の影響を受ける。その影響額は売上高4400億円減、営業損益で1350億円減を見込んでいる。これらの影響により、2020年度の業績予想は売上高4兆1000億円、営業利益1200億円、税引き前当期純利益1450億円、当期純利益1000億円とした。これは2014年度に掲げた2020年度の成長目標である売上高5兆円、営業利益率8%を大きく下回る見込みだ」と述べている。
これらの厳しい状況を受けた上で、2020年度中に2025年度に向けた中期経営計画を策定する計画としているが、基本方針として「多様化する社会課題の解決に向け、ソリューション事業を重点的に強化するとともに、収益力向上と経営資源の有効活用のために事業ポートフォリオの見直しを図り、経営基盤をより一層強化する」ことを示す。
その中で、以下に示す4つの重点施策を挙げる。
- 市場ニーズの取り込みや技術開発強化など基本動作の徹底による主要事業の収益力強化
- 次世代の柱となる新たな事業モデル、新事業の創出と育成
- 不採算および低収益事業の見極めと高収益、育成事業への経営資源の再配分
- 関係会社の機能見直しを含めた最適なグループ運営体制の追求
横ぐしによる事業モデルの変革
これらの中でポイントになるのが「次世代の柱となる新たな事業モデル、新事業の創出と育成」である。これらに向けた取り組みとして、グループ内外の力を結集し、オープンイノベーションなどを積極活用した循環型ビジネス、データ利活用ビジネス、プラットフォームビジネスなど新たな事業モデルや新事業の創出と育成を加速に取り組む。
具体的には、2020年4月1日に社長直轄組織として「ビジネスイノベーション本部」を新設。既存の枠組みを超えた新たな事業モデル構築や新事業創出の支援を行っていく。また、三菱電機の統合IoT基盤「ClariSense」の構築を発表した(※)。三菱電機のIoTに関する知見をIoTシステム統一設計ガイドやソリューションライブラリなどの形で取りまとめ、短期間でサービス創出が行えるようにする。さらに、今後スタートアップ企業に100億円の投資を実施しコーポレートベンチャリング活動を強化することで、オープンイノベーションを加速させる。
(※)関連記事:三菱電機が全社横断のIoT基盤を構築、IoTサービスの迅速な開発と提供を目指す
三菱電機では従来、事業部制により個々の事業を強化することを企業の強さの基盤としてきた。一方で、自前主義や事業部の縦割り意識が強いことが、横断での連携や新たな事業創出の壁となってきた面がある。デジタル変革やIoT(モノのインターネット)などが広がりを見せる中、他部門や他社と連携することで得られる総合的なソリューションがより求められる中で、横ぐしにより三菱電機の総合力を発揮できる基盤の創出に取り組む方針だ。
杉山氏は「COVID-19の影響による人と人とのかかわり方の変化など、社会課題も大きく変わることが想定される。グループ内外の力を結集し変化する需要への対応や社会課題解決に全力で取り組んでいきたい」と語っている。
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