サステナブルを成長の芽に、三菱電機が新体制で進める“前向き”な環境対策:製造業は環境にどこまで本気で取り組むべきか(1/4 ページ)
三菱電機では2024年4月にサステナビリティへの取り組みを進める「サステナビリティ・イノベーション本部」を設立した。サステナビリティ・イノベーション本部長を務める三菱電機 上席執行役員の小黒誠司氏に、取り組みとその考え方について話を聞いた。
製造業に対し脱炭素や資源循環など環境への取り組み圧力が高まっているが、こうした動きを前向きに捉え、社内の変革とともに新たなビジネス機会創出として、さまざまな取り組みを進めているのが三菱電機だ。
三菱電機では2024年4月に「価値創出」と「基盤強化」の2つの点からサステナビリティ(持続可能性)に取り組む「サステナビリティ・イノベーション本部」を設立した。そのサステナビリティ・イノベーション本部長に就任した三菱電機 上席執行役員の小黒誠司氏に、取り組みとその考え方について話を聞いた。
連載「製造業は環境にどこまで本気で取り組むべきか」の企画趣旨
環境問題に対する取り組みが、製造業としてのビジネス面で無視できないものとなってきています。しかし、これらは収益性や事業性とトレードオフの関係になる場合も多く、やみくもに進められるものではありません。そこで、MONOistでは、環境特集「カーボンニュートラルへの挑戦」および「サステナブルなモノづくりの実現」の中心企画として、製造業として環境への取り組みにどのように向き合い、どのような優先順位で進めているのかを各企業のキーマンに伺う本連載を企画しました。
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サステナビリティ・イノベーション本部を新たに設立
MONOist 三菱電機では新たに2024年4月にサステナビリティ・イノベーション本部を設立しました。どういう背景があったのでしょうか。
小黒氏 サステナビリティを経営の根幹に位置付けるという方針の中で、各事業グループでバラバラに行ってきたサステナビリティ関連の取り組みをまとめるためにできたのがサステナビリティ・イノベーション本部です。従来のサステナビリティ推進部、環境推進部、ダイバーシティ&インクルージョンやサステナビリティ関連の事業化プロジェクトを統合する形で生まれました。
ここでは「トレードオン(背反しそうな価値観を両立させる)」の考え方のもと、環境や社会への貢献と事業成長を両立させる事業分野の創出と拡大に取り組んでいます。具体的には、大きく分けて「価値創出」と「基盤強化」という2つの方向性で取り組みを進めています。
価値創出で、大きな取り組みの1つが、2023年10月に先行してプロジェクトとして開始した「GIST(Global Initiative for Sustainable Technology)プロジェクト」です。これは、サステナビリティの視点でグローバルで新事業を生み出すプロジェクトで、「ネイチャーポジティブのフロントランナーを目指す」を方針として、従来にない新たなビジネスを生み出すために試行錯誤しています。
活動開始時は、各事業本部からリーダークラスのメンバーに集まってもらい、サステナビリティに関する現状把握と未来マップ制作から始めました。マクロ分析やミクロ分析を行いながら、2040年にどういう世界になっているかを描き、それを基に各種シナリオを作成し、方向性を定めていきました。2024年3月までにそれらの方針をまとめ、サステナビリティ・イノベーション本部の中で形にするために本格的に動き始めました。
価値創出で中心となるもう1つの取り組みが「リサイクル共創センター」によるリサイクル技術の外部展開です。三菱電機では家電リサイクル法によりリサイクル工場を運営しており、さまざまなリサイクル技術の開発を行っています。その中で、まずプラスチック資源循環ソリューションの事業化を推進します。プラスチック選別では一般的には赤外線を用いるケースが多いですが、三菱電機では静電選別など高度選別技術ノウハウを保有しており、これらを家電だけでなく他の領域にも広げていきます。こうしたリサイクル技術の事業化をサステナビリティ・イノベーション本部で行っていきます。
一方、基盤強化としては、これらの事業創出に関する事業基盤を確立する一方、従来の環境についての規制対応や標準対応、情報開示の仕組み作りを進めていきます。また、グローバルでの規制やビジネス要求などについて取りまとめ、社内向けの情報発信やガイドライン作成も行います。基盤強化に取り組むメンバーは環境についてそれぞれの領域でのプロフェッショナルが多く所属しており、さまざまな知見から物事を見られる多様性に富んだ組織になったと考えています。
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