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サステナブルを成長の芽に、三菱電機が新体制で進める“前向き”な環境対策製造業は環境にどこまで本気で取り組むべきか(4/4 ページ)

三菱電機では2024年4月にサステナビリティへの取り組みを進める「サステナビリティ・イノベーション本部」を設立した。サステナビリティ・イノベーション本部長を務める三菱電機 上席執行役員の小黒誠司氏に、取り組みとその考え方について話を聞いた。

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トレードオンで環境対策の事業化を次々に

MONOist 環境への取り組みは事業部門にとってコストアップにつながったり、事業競争力とトレードオフの関係になったり、対ビジネスの点で難しい点もあると思いますが、その点はどういう考えですすめているのでしょうか。

小黒氏 環境への取り組みは、事業側にしてみるとコストアップにつながる点は確かにあります。しかし、三菱電機全体で2030年度のスコープ1、2の実質排出量ゼロを目標として掲げている以上、その取り組みは全社で進めていかなければなりません。そこに向けて、各事業本部にも役割が割り振られており、それぞれが進めていかなければならない重要テーマとなっているため、あまり反対の声は聞きません。

 また、2030年度目標について脱炭素化を進めるにしても、下げていく方法は限られています。1つは省エネを進めるということです。これは、エネルギーマネジメント部門や製造部門が主に拠点で進めていくものとなります。あとは、創エネとして、工場の屋根などの太陽光発電システムを設置し、オンサイトPPA(電力販売契約)を行うやり方です。そして、それで足りない部分は再生可能エネルギーを外部から調達したり、カーボンクレジットで取引したりする形となります。

 三菱電機はメーカーですので、まずは生産技術を中心に製造工程で省エネ化を図るのが活動の第一歩となります。さらに、三菱電機は生産財や生産技術に関するソリューションをビジネスとして展開しておりますので、ここで得られたノウハウは外部に事業展開できます。そういう意味では、一般的な製造業に比べて環境への取り組みが事業成長になる道筋が比較的身近な形で見えており、取り組みそのものに後ろ向きな声は少ないと感じています。

MONOist さまざまな活動の中で、現時点で最も大きな課題だと考えていることは何でしょうか。

小黒氏 カーボンニュートラルもサーキュラーエコノミーも三菱電機1社で進められるものではなく、社会全体の取り組みや機運に左右される部分があります。その影響や振れ幅が難しい点だと感じています。サプライチェーンでパートナーやサプライヤーを巻き込んでいくことも含めて、今後の取り組みとして重要だと考えています。

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三菱電機グループのグリーン調達基準書[クリックでWebサイトへ]

 ただ、こうした点が、現在の取り組みのボトルネックになっているかというとそうではありません。2030年度の目標であるスコープ1、2のカーボンニュートラル化については順調に進んでおり、ここまでは自社内での取り組みで完結できるものです。サプライチェーン全体で一緒に進めていくのはその先の活動となるので、そこまでに必要なものをそろえ、社会全体の動向を見ながら、しっかり対応していきたいと考えています。

 先述したように、スコープ3を見える化するe-Proシステムのようなシステム構築も進んでいますし、サプライヤーに対しては、グリーン調達基準書なども公開しており、カーボンフットプリントや再生材などを条件に加えるための一定の枠組みはできています。ただ、三菱電機だけの考えで進むものではないので、サプライヤーと一緒に確認しながら、お互いにできることを持ち寄って進めていきたいと考えています。

環境を切り口に日本の製造業の価値を再発見する

MONOist 今後の目標についてどう考えていますか。

小黒氏 三菱電機は「環境ビジョン2050」を示しており、環境指針や重点取り組みなどを着実に進めていくことが目標となります。ただ、CSRの範囲だけで推進力を発揮するのは難しく、大きく動かすためには事業化を進めていかなければなりません。そのためにもトレードオンの事業を生み出していくのが最大の目標です。

 今後、世界は完全循環型社会へと変わっていく中、今は過渡期にあると考えています。今まで大量消費が優先される中で軽視されてきた、修理する権利や製品を長く使えるようにする価値が見直されるようになっています。そういう価値観においては、日本の製造業が得意とする「壊れなくて長く使える」点などが再評価される動きも出てきます。そういう価値を再発見し、強みに変えていくことにも力を入れていきたいと考えています。

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三菱電機の環境ビジョン2050[クリックで拡大] 出所:三菱電機

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