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サステナブルを成長の芽に、三菱電機が新体制で進める“前向き”な環境対策製造業は環境にどこまで本気で取り組むべきか(3/4 ページ)

三菱電機では2024年4月にサステナビリティへの取り組みを進める「サステナビリティ・イノベーション本部」を設立した。サステナビリティ・イノベーション本部長を務める三菱電機 上席執行役員の小黒誠司氏に、取り組みとその考え方について話を聞いた。

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スコープ3など温室効果ガス排出の情報をどう把握するか

MONOist スコープ3のカーボンニュートラル化を目指すためにも、製品バリューチェーン全体での情報の把握が重要だといわれていますが、その点についてはどのように考えていますか。

小黒氏 三菱電機が関係する温室効果ガス排出の中で、スコープ3の領域が全体の99%以上を占めており、さらに製品に関するものが90%以上を占めている状況を考えるとスコープ3での温室効果ガス排出量削減は大きな課題だと考えています。そのためには、把握の難しいスコープ3での情報把握が重要です。スコープ3の情報把握については、既に社内で製品環境データ収集システム「e-Proシステム」を開発し、システム上で一元的に管理できるようになっています。

 ただ、その情報の精緻化については現在進行形で進めているところです。環境情報は規制や業界標準などが徐々に決まっていくことで算出方法が変わり、それに対応することが必要になります。さらにスコープ3領域については、全て実測値を扱うわけにもいかず、推計値を活用しているケースも多くあります。それを実際に近い形で情報を集められるように、パートナーやサプライヤーとの協力も含めて、今さまざまな形で取り組んでいるところです。CSRDの適用が始まるとサプライヤーの情報についても管理することが義務付けられます。まだ、全体的な声掛けなどはこれからですが、今後さらにサプライヤーとの協力関係を強化していくことが必要になると考えています。

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製品環境データ収集しシステム「e-Proシステム」の構成イメージ[クリックで拡大] 出所:三菱電機

エコデザインなど資源循環への取り組み

MONOist 資源循環についての取り組みについてはどう考えていますか。

小黒氏 サーキュラーエコノミーに関する取り組みでは欧州が進んでおり、さまざまな規制を整備する動きが生まれています。こうした各国の情報を把握し、整理して各事業本部や、その設計部門に提供できるように準備していくことが重要だと考えています。

 ただ、規制が全てネガティブなものかというとそうではなく、規制があるからできることもあると捉えています。例えば、家電リサイクル法は開始時期はさまざまな問題がありましたが、リサイクル費用を消費者が支払うという仕組みができたことで、メーカーとしてもリサイクルに関する投資を着実に行い運営することができています。規制がない部分だと自発的な行動となり、収益化が難しいケースも多くあります。そのため、規制化がうまく進んでいるところに積極的に対応し、事業化ができるかを検討しています。

 具体的な取り組みの1つが、リサイクル共創センターの説明でも紹介しましたが、家電リサイクル法への取り組みで培った技術の他領域への展開です。例えば、欧州では自動車の新車製造に一定量以上の再生プラスチックを使用することを義務付ける規制が発表されており、再生プラスチックの需要は今後間違いなく伸びます。高品質なリサイクル材を得るためには、選別技術が重要になり、三菱電機が持つ静電選別方式の高精度選別ソリューションが生きる場面が出てきます。

 三菱電機内でも2035年までにごみとして埋め立てるプラスチックをゼロにし、何らかの形で再生する目標を掲げています。これらの取り組みで生み出したリサイクル技術を外部ソリューションとして展開していくことを目指しています。

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三菱電機が目指すリサイクル事業のサービス化[クリックで拡大] 出所:三菱電機

MONOist 資源循環を効果的に進めることを考えるとモノづくりの段階から、部品を選別しやすい設計や、製造方法などが求められますが、そういう取り組みも進めているのですか。

小黒氏 三菱電機では環境にやさしい設計として「エコデザイン」を目指すため、エコデザイン分科会活動を行っています。各国法規制や環境配慮設計の好事例などの共有、ライフサイクルアセスメントの計算式の検証、製品アセスメント項目の検討などを進めています。評価項目の中で、分解しやすさなども指標として加えるようにしています。

 さらに本当に資源循環を進めていくためには、サプライチェーン全体で考えていく必要があります。小型家電などについてはまだまだリサイクルが難しいなど、全体の仕組みづくりが必要だと考えています。

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