製造業で重要な高純度リンマテリアルの循環利用技術開発に着手:材料技術
三井化学と下関三井化学は、国内の未利用リン資源から回収したリン酸を高純度リンマテリアルへと高付加価値化し、製造業分野での循環利用を可能とするために必要な技術開発に着手した。
三井化学と三井化学の100%子会社である下関三井化学は2024年11月21日、国内の未利用リン資源から回収したリン酸を高純度リンマテリアルへと高付加価値化し、製造業分野での循環利用を可能とするために必要な技術開発に着手したと発表した。
今回の取り組みは、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が公募した「NEDO先導研究プログラム/新産業・革新技術創出に向けた先導研究プログラム」に、産業技術総合研究所、米山化学工業、佐賀大学とともに共同提案し、採択されたものだ。
研究開発の内容や実施体制、社会実装する価値
この取り組みは、湿式法でリン酸を製造する下関三井化学、触媒化学が得意な三井化学など、リン酸への知見や技術力を有している各機関が共同で行うことで、従来、主に農業分野における肥料用途に限定されていた回収リンのリサイクル用途の拡大につなげる。
研究開発テーマは「製造業分野で重要な高純度リンマテリアルの循環利用技術開発」となる。同技術の開発は、「未利用資源からリン酸を回収し、分子レベルで超高純度に精製するシーズ技術開発(研究項目A)」「リンを原子レベルで超高純度に精製する技術開発(研究項目B)」「有機リン化合物を超高純度で製造する技術開発(研究項目C)」で構成される。
研究開発の経緯
高純度リンマテリアルは、電気自動車(EV)の電池や半導体、再生エネルギー発電蓄電池など、脱炭素産業社会の形成に欠かせない材料だ。これらは、リン鉱石から作られる「黄リン」を共通の原料として製造されているが、その生産にはいまだに19世紀後半に開発された手法が用いられており、環境に大きな負荷を与えている。
また、日本で使われるリン鉱石および黄リンは、海外輸入に100%依存しているのが現状だ。リン資源の安定供給には経済安全保障上のリスクもあることから、リンは特定重要物資に指定されている。
今回の研究では、国内製造業分野などで発生するリン含有廃棄物および副産物(未利用リン資源)を高純度リンマテリアルへと高付加価値化させ、回収リンを原子および分子のレベルで精製し、幅広い製造業分野での循環利用を可能とする技術の確立を目指す。
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