三井化学が廃プラ分解油を用いたケミカルリサイクル製品の製造を開始:リサイクルニュース
三井化学は、CFPから調達した廃プラスチックを原料とした熱分解油を、2024年3月から三井化学の大阪工場(大阪府高石市)のクラッカーへ投入し、マスバランス方式によるケミカルリサイクル由来の誘導品(化学品/プラスチック)の製造と販売を開始したと発表した。
三井化学は2024年3月22日、サーキュラーエコノミーの実現に向けて、CFPから調達した廃プラスチックを原料とした熱分解油(以下、廃プラ分解油)を、同月から三井化学の大阪工場(大阪府高石市)でナフサを分解するクラッカーへ投入し、マスバランス方式によるケミカルリサイクル由来の誘導品(化学品/プラスチック)の製造と販売を開始したと発表した。
マスバランス方式の概要
マスバランス方式とは、原料から製品への加工/流通工程において、ある特性を持った原料(バイオマス由来原料やリサイクル由来原料)がそうでない原料(石油由来原料)と混合される場合に、その特性を持った原料の投入量に応じて、製品の一部に対してその特性の割り当てを行う手法だ。
今後、三井化学グループは認証制度として欧州で広く採用されているISCC PLUS認証に基づき、マスバランス方式によるケミカルリサイクル製品を市場展開していく予定だ。
今回の取り組みで目指す循環型スキーム
廃プラ分解油は石油由来やバイオマスのナフサと同様に、炭化水素油であり、それらをクラッカーに投入することで、エチレン、プロピレン、C4/C5留分、ベンゼンといった基礎原料を製造できる。三井化学では、得られた基礎原料を基にフェノールなどの基礎化学品やポリエチレン、ポリプロピレンといったプラスチックを製造するため、誘導品(化学品/プラスチック)の物性は既存品(バージン品)と同等となる。
同社は今回の取り組みと2021年12月に大阪工場のクラッカーへ投入を開始したバイオマスナフサの両輪で、石化原料からの原料転換を進め、日本初のバイオ&サーキュラークラッカーを実現し、サステナブル(持続可能性)を超えたリジェネラティブ(再生的)社会の実現に向けて貢献していく。
なお、三井化学では、「素材の素材まで考える」と「世界を素から変えていく」をキーワードに、バイオマスでカーボンニュートラルに貢献する「BePLAYER」と、リサイクルでサーキュラーエコノミーに貢献する「RePLAYER」といった2つのブランドを立ち上げ、再生可能資源の活用とストック資源の管理を目指している。これにより、複合的かつ複雑な社会課題を解決し、サステナブルを超えたリジェネラティブなライフスタイルを素材から提供することを目標に掲げている。
また、花王の廃プラスチックを原料とし、CFPおよびプライムポリマーと協力して、リサイクルプラスチックを製造し花王の製品に使う。このケミカルリサイクルによる循環型スキームの実装に向け共同検討を開始する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 三井化学と三菱ガス化学がバイオマスポリカーボネート製品の生産と販売を開始
三井化学と三菱ガス化学は、バイオマスポリカーボネート製品の生産および販売に向けた取り組みを開始した。三井化学がモノマー原料を供給し、それを用いたポリカーボネート樹脂の生産、販売を三菱ガス化学が担う。 - 三井化学がアクリルアマイド製造用バイオ触媒の生産能力を増強
三井化学は、子会社のポラリスケミカルが、アクリルアマイド製造用バイオ触媒の生産能力を増強したと発表した。これにより、世界市場で堅調なアクリルアマイドの需要に応え、バイオ事業の拡大を図る。 - 三井化学が副業制度を正式に導入
三井化学は社員の多様な働き方促進を目的に同月から副業制度を正式導入したと発表した。 - 三井化学が大牟田工場内のXDIプラントの生産能力を20%増強
三井化学は、難黄変コート用硬化剤の需要増に対応するため、大牟田工場内のXDI(メタキシリレンジイソシアネート)プラントの生産能力を増強することを決定したと発表した。 - 三菱ケミカルグループと三井化学、化学品物流の標準化の共同検討開始
三菱ケミカルグループと三井化学は、化学品物流の標準化や効率化に向けた共同検討を開始した。物流業界の人手不足などによる輸送、保管能力不足に対応する狙いだ。 - 三井化学がTDIプラントの生産能力を年間5万tに縮小、国内外の需給動向を考慮
三井化学は大牟田工場内にあるトルエンジイソシアネートプラントの生産能力を2025年7月に縮小する。