核融合発電でも活躍する超電導の力をアピール、フジクラの高温超電導線材:CEATEC 2024
フジクラは、「CEATEC 2024」に出展し、核融合発電にも利用可能な高温超電導線材における技術力をアピールした。
フジクラは、「CEATEC 2024」(2024年10月15〜18日、幕張メッセ)に出展し、核融合発電にも利用可能な高温超電導線材における技術力をアピールした。
超電導で動力なしでレール上を浮上走行する車体
線材メーカーであるフジクラは1970年代から超電導線の研究開発を開始。2009年から超電導線材の販売を開始しており、高温超電導の活用が広がる中でさまざまな超電導線材の導入を進めている。
超電導とはある一定の温度環境において、物質の電気抵抗がゼロになる現象だ。超電導には、磁場を超電導体の中から外に押し出す「マイスナー効果」という特性があり、磁石に近づけると反発する。その際に、超電導体の一部で超電導にならない部分があると磁場がそこを通り抜けて引き付ける力が発生する一方、その周辺ではマイスナー効果による反発が起こっているため、超電導体がピン止めされたように固定される「ピン止め効果」が発生する。
フジクラではCEATEC会場で、この超電導特有のマイスナー効果とピン止め効果を生かし、超電導線材を配置した車体が磁石の線路上を浮上して走るというデモを行った。超電導線材を巻き付けた車体に対し、進行方向では磁場が一様になり幅方向では磁場が左右対称になるように設置された磁石レールを配置。車体を液体窒素で冷やすことで超電導現象を発生させ、マイスナー効果で浮上させ、ピン止め効果でレールから外れることなく走行する。
ブース説明員は「CEATECブースでは、高温超電導の価値と、フジクラの持つ超電導線材をアピールするためにデモを行っている。実際の用途としては、核融合発電などで利用が広がっている」と説明する。
実際に2023年2月には、核融合炉の実証に取り組む米国企業のCommonwealth Fusion Systems(CFS)に対し、レアアース系高温超電導線材の本格納入の開始を発表するなど、核融合に取り組むベンチャー企業からの引き合いは多いという。「核融合を小型の設備で行うためには、超電導線材は欠かせない。小型核融合炉ではベンチャー企業も世界中から多く参入が進んでおり、そういう企業から引き合いが増えている」(ブース説明員)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- フジクラが核融合実証炉向けにレアアース系高温超電導線材の本格納入を開始
フジクラは、世界初だという核融合炉の実証に取り組む米国企業のCommonwealth Fusion Systemsに対し、レアアース系高温超電導線材の本格納入を開始した。同線材を納入することで、核融合発電に必要な超電導電磁石の小型化が可能となる。 - 実際の核融合炉と発電の仕組み
自然科学研究機構 核融合科学研究所 教授の高畑一也氏が、核融合発電の基礎知識について解説する本連載。第2回では、核融合炉/発電の基本的な仕組み、核融合炉に使われる主要装置について解説します。 - 核融合発電とは? 優位性や安全性などの基礎を解説
自然科学研究機構 核融合科学研究所 教授の高畑一也氏が、核融合発電の基礎知識について解説する本連載。第1回では、地上で実現する核融合反応とはどのようなものか、核融合発電の優位性と安全性、実現に必要な物理的条件、どうして核融合発電が必要なのかについて紹介します。 - 核融合炉発電の研究を加速、ヘリカル型核融合炉初号機の完成は2034年を目標に
ヘリカル型核融合炉の開発を進める国内ベンチャー企業のHelical Fusionは、オンラインで記者会見を開き、核融合エネルギーの社会実装に向け核融合科学研究所(NIFS)内に「HF共同研究グループ」を同月に設置することでNIFSと合意したと発表した【訂正あり】。 - エアバスが東芝をパートナーに選んだ理由「超電導モーターの世界的リーダー」
エアバスと東芝は、「2024国際航空宇宙展」が開催中の東京ビッグサイトで会見を開き、次世代の水素航空機開発に向けた超電導モーター技術の共同研究を進めることで合意したと発表した。 - 核融合炉心プラズマの制御にエンドポイントAIを活用、応答速度1ms以下に対応
制御AI技術を研究開発するエイシングは、核融合技術の進展のため、核融合科学研究所との共同研究を開始した。プラズマの制御技術を確立し、安定した核融合技術の実現を目指す。