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エアバスが東芝をパートナーに選んだ理由「超電導モーターの世界的リーダー」航空機技術

エアバスと東芝は、「2024国際航空宇宙展」が開催中の東京ビッグサイトで会見を開き、次世代の水素航空機開発に向けた超電導モーター技術の共同研究を進めることで合意したと発表した。

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 フランスのエアバス(Airbus)と東芝は2024年10月16日、「2024国際航空宇宙展」(同年10月16〜19日)が開催中の東京ビッグサイト会議棟で会見を開き、エアバス子会社のエアバス・アップネクスト(Airbus UpNext)と東芝傘下の東芝エネルギーシステムズ(以下、東芝ESS)の間で、次世代の水素航空機開発に向けた超電導モーター技術の共同研究を進めることで合意したと発表した。まずは2年後の2026年内をめどに、東芝ESSが2022年に試作した2MW級の超電導モーターをベースに、安全性や軽量化、効率などエアバスが求める航空機向けの要件を満たすための初期段階の開発を進める方針だ。

会見の登壇者
会見の登壇者。左から、エアバス・アップネクスト クライオプロップ実証機および極低温技術責任者のルドヴィク・イバニェス氏、エアバス シニアバイスプレジデント兼将来技術研究責任者のグゼゴルツ・オムバッハ氏、東芝 執行役員 東芝ESS 取締役兼パワーシステム事業部長の竹内努氏、同社 パワーシステム事業部新技術事業統括の鈴木健介氏。会見では共同開発の契約書への署名も行われた[クリックで拡大]

 エアバス シニアバイスプレジデント兼将来技術研究責任者のグゼゴルツ・オムバッハ氏は「これからの航空機は、インテリジェントでコネクテッドあることに加え、水素とモーターで動くことが求められる。エアバスは2050年までに航空機の脱炭素を実現するという野心的な目標を掲げているが、そのためのイノベーションを重視しており、日本の優れた技術を活用するため拠点として2024年5月にテックハブ・ジャパンを開設した。今回の東芝との超電導モーターの共同開発は、テックハブ・ジャパンにおける最初の外部パートナーシップとなる」と語る。

 東芝の執行役員で、東芝ESS 取締役兼パワーシステム事業部長の竹内努氏は「発電所向けなどの高速回転発電機は東芝の創業から手掛ける技術だ。そして超電導技術も、日本初のMRI向けの超電導磁石の開発に始まり、単結晶シリコンウエハー引き上げ用装置や重粒子線治療装置などさまざまな用途に向けて展開するなど60年以上の歴史がある。2022年には発電機と超電導の技術を組み合わせた2MW級の超電導モーターを発表したが、これが次世代の水素航空機開発に向けて新たな技術を求めるエアバスのニーズと合致し、今回の発表につながった」と述べる。

東芝ESSが2022年に発表した2MW級の超電導モーターの実物大モックアップ
東芝ESSが2022年に発表した2MW級の超電導モーターの実物大モックアップ。外形寸法は外径約500×全長約700mmで、2MW級モーターとしては極めて小さい[クリックで拡大]

 エアバスが航空機からのCO2排出を実質ゼロにすべく開発を進めているのが、水素をエネルギー源とする水素航空機だ。水素航空機の実現に向けては、水素をエンジンで直接燃料として使用することも検討しているが、エンジンに替えて燃料電池の電力と超電導モーターを動かして推進力とする超電導電気推進システムも有力な選択肢になっている。

燃料電池を電力源とするエアバスの電動推進システム「ZEROe」の模型
燃料電池を電力源とするエアバスの電動推進システム「ZEROe」の模型[クリックで拡大]

 特に超電導電気推進システムは、超電導モーターの超電導状態を作り出すのに必要な極低温環境を実現する−253℃の液体水素が、電気推進システム全体を効率的に冷却しつつ、電力を供給する燃料電池のエネルギー源にもなる。また、航空機電動化のための電気システムにおけるエネルギー損失がほとんどない送電を実現できるため、エネルギー効率と性能を大幅に向上させられる点から期待を集めている。

 エアバスは500kW級の超電導モーターによる実証でその可能性を既に確かめており、子会社のエアバス・アップネクストによる、2MW級の超電導電気推進システムの実証機「クライオプロップ」の開発も発表している。今回の東芝ESSとの共同開発では、このクライオプロップの仕様となる2MW級超電導モーターの航空機向けでの実用化が主眼となる。

 オムバッハ氏は「東芝は超電導モーターの世界的リーダーであり、そこにエアバスの技術や知見を組み合わせることで勝ち筋を見いだせると判断した」と述べている。

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