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陽子線治療用の超電導サイクロトロンを開発、照射時間3分の1以下:医療機器ニュース
住友重機械工業は、がん治療に用いる陽子線治療用の超電導サイクロトロンの開発に成功した。陽子線治療用としては世界最高レベルとなる、1000nAの高強度陽子線を発生できる。
住友重機械工業は2021年10月26日、陽子線治療用の超伝導サイクロトロンの開発に成功したと発表した。陽子線の強度を高め、陽子線治療用としては世界最高レベルとなる1000nAの高強度陽子線を発生できる。
陽子線治療システムは、陽子線を利用したがん治療装置。近年は、腫瘍の形に合わせて細い陽子線を照射し、腫瘍以外の正常部位のダメージを抑えるスキャニング照射が用いられている。
陽子線の照射には長い時間を必要とするが、新開発の超伝導サイクロトロンは陽子線の強度を従来の3倍以上に高め、腫瘍への照射時間を3分の1以下に短縮した。また、超電導磁石を用いることで、消費電力が40%以上低減。これにより、陽子線治療システムを低コストで稼働可能になる。
スキャニング照射では、特に呼吸で位置が移動する肺や肝臓などの腫瘍において、高い精度が求められる。その精度を高めるためには、短時間での照射が必要であり、高強度かつ超高速で陽子線を走査する技術が求められていた。
同社は今後、超伝導サイクロトロンと超高速スキャニング技術を組み合わせて試験を実施。低侵襲ながん治療の陽子線治療に向けて、製品開発を進めるとしている。
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