胃がんを対象としたAI病理診断支援ソフトウェアの汎用性を実証:医療機器ニュース
オリンパスは、AI病理診断支援ソフトウェアの実用化に向けた共同研究を呉医療センター・中国がんセンターなど6施設と実施した。病理標本に対して感度100%、特異度50%以上の精度を達成し、胃がんを対象とした汎用性を実証した。
オリンパスは2021年8月25日、AI(人工知能)病理診断支援ソフトウェアの実用化に向けた共同研究で、同ソフトウェアが胃生検の病理標本に対して感度100%、特異度50%以上の精度で腺がんの判定をし、汎用性を実証したと発表した。
同社は、2017年から呉医療センター・中国がんセンターと共同で、AI病理診断支援ソフトウェアの開発に取り組んできた。2020年からは製品化に向けた汎用性の検証、精度向上を目指し、呉医療センター・中国がんセンターを含む国内6施設との共同研究を進めている。
AI病理診断支援ソフトウェアのディープラーニング技術には、病理画像の特徴解析に最適化したコンボリューショナルネットワーク(CNN)を使用。3施設の病理標本から作成した教師データを用いて、CNNのモデルを学習させる学習ステップと、学習させたモデルを使用し、6施設の病理標本から作成した病理ホールスライド画像を腺がん画像と非腺がん画像に分類する推論ステップの2段階で、今回の研究を構成した。
まず、学習ステップでは、3施設から提供された病理ホールスライド957件から作成した教師データを用いて学習させた。
推論ステップでは、学習させたAI病理診断支援ソフトウェアを用いて、6施設が所持する約200件ずつの病理ホールスライド画像を、腺がん画像と非腺がん画像に分類した。
その結果、病理標本の厚みや色味が各施設で異なっていても、全施設で陽性を陽性と診断する割合である感度が100%、陰性を陰性と判断する特異度が50%以上を達成した。
共同研究は2023年まで実施する予定で、今後も引き続き、学習件数の追加とAIアルゴリズムの改良を進め、精度向上と汎用性の確立に取り組む。将来的には、同ソフトウェアの製品化により、病理医の負担を軽減して診断の質向上を支援する。
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