天然化合物プベルル酸の腎毒性をヒト細胞実験で確認:医療機器ニュース
日機装と金沢大学は、プベルル酸が腎臓細胞の一種である近位尿細管上皮細胞に対して毒性を持つことを、創薬研究用ヒト腎細胞「3D-RPTEC」を用いて確認した。
日機装と金沢大学は2024年10月3日、プベルル酸が腎臓細胞の一種である近位尿細管上皮細胞に対して毒性を持つことを、創薬研究用ヒト腎細胞「3D-RPTEC」を用いて確認したと発表した。ヒト細胞実験でプベルル酸の腎細胞への毒性を確認したのは世界初だという。
アオカビから産生される天然化合物のプベルル酸は、紅麹関連食品による健康被害の一因とされている。
日機装の3D-RPTECは、ヒト初代近位尿細管上皮細胞を3次元で培養することでヒト腎皮質に近い薬物トランスポーターを発現する研究用細胞だ。今回の研究では、3D-RPTECと両者が共同開発した腎毒性評価方法を用いて、プベルル酸が腎臓細胞に及ぼす影響を評価した。
その結果、一定以上の濃度のプベルル酸によって近位尿細管上皮細胞に毒性が発現し、細胞死が誘導されることが明らかとなった。また、その細胞毒性は、腎障害が多発する抗がん剤シスプラチンと同程度であることも分かった。さらに、近位尿細管上皮細胞がプベルル酸を取り込む経路に、薬物トランスポーターの一種である有機アニオントランスポーターが関与していることが示唆された。
これまで、細胞を用いた毒性評価や薬理評価には、腎臓の株化細胞や初代細胞が使用されてきたが、薬物に対する応答性は十分ではなかった。3D-RPTECは、従来の腎細胞よりも薬物の応答性が向上しており、より高い感度で評価ができる。
両者は今後、細胞実験を通じて化合物全般の腎毒性を効率的に評価する方法を確立していく。
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