CFRPを用いた真空含浸補修技術がアメリカ船級協会の型式承認を取得:材料技術
浮体式海洋石油/ガス生産貯蔵積出設備と浮体式海洋石油/ガス貯蔵積出設備向けの東レの真空含浸補修技術「現場VaRTM工法」が、腐食により設備で生じた減厚箇所への標準的な船舶補修工法として世界で初めて、アメリカ船級協会の型式承認を取得した。
東レは2024年9月13日、浮体式海洋石油/ガス生産貯蔵積出設備(FPSO)と浮体式海洋石油/ガス貯蔵積出設備(FSO)向けの真空含浸補修技術「現場VaRTM工法」が、腐食により設備で生じた減厚箇所への標準的な船舶補修工法として世界で初めて、アメリカ船級協会(ABS)の型式承認を取得したと発表した。
ABSは世界有数の船級協会であり、世界のFPSOおよびFSOの約半数がABS認証船だ。今回の型式承認取得により、ABS認証船は東レが特許を有する現場VaRTM工法を適用可能となり、船舶補修の際に必要なエンジニアリングレビューや検証に要する時間を減らせる。
現場VaRTM工法の特徴
FPSOやFSOの設備保守では通常、鋼材を用いた補修を洋上で行うが、それに伴う溶接は火気工事を必要とするため、石油やガスの生産を停止しなければならない。
一方、三井海洋開発と東レが共同開発し、2020年にABSの型式認定を取得した現場VaRTM工法は、補修対象の既設鋼構造物の表面に、強度と弾性率のバランスに優れる炭素繊維を使用した織物「トレカクロス」を配置し、その上からフィルムで被覆後、真空ポンプで真空状態を形成し、エポキシ樹脂を注入/硬化させて形成したCFRPと鋼構造物を一体化させる。
そのため、従来の鋼材を用いた補修法と比べ、資機材の搬入が容易で、少人数/短期間での施工が可能となる他、火気工事を伴わないため、石油やガスの生産に与える影響を減らせる。
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