ステンレスと同等の強度のポリエチレンフィルムを開発、フッ素樹脂代替で展開:材料技術
東レは「nano tech 2024 第23回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」に出展し、超高強度を有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィルムを披露した。
東レは「nano tech 2024 第23回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」(2024年1月31日〜2月2日、東京ビッグサイト)に出展し、超高強度を有する超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)フィルムを披露した。
PETフィルムと比較して面内熱伝導率が10倍以上
エンジニアリングプラスチックの1種であるUHMWPEは汎用のポリエチレンと比較して分子量が10倍大きく、強度に優れることから高強度繊維の原料として使用されている。しかしながら、UHMWPEはその分子量の大きさから分子鎖の絡み合いが非常に大きく、成形加工性が低いことから、従来は二軸延伸による高強度フィルム化は困難だった。
そこで、東レは独自の押出/二軸延伸技術である溶融押出製膜により、UHMWPEの分子鎖を2次元方向に高度に配向させたナノ構造を実現することに成功し、ステンレス鋼に匹敵する高強度フィルムを創出した。
今回のUHMWPEフィルムは、工業用プラスチックフィルムとして一般的に使用されるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと比較すると、引っ張り強度が2倍以上であり、プラスチックフィルムとして最高の強度を有するアラミドフィルムと同等となる。UHMWPE原料の特性上、耐寒性にも優れていることから、超電導/宇宙環境などの極低温環境でも使用可能であり、高強度を生かして部材の軽量/省スペース化に貢献する。
さらに、UHMWPEフィルムは上記のナノ構造により面内方向の熱伝導特性に優れており、PETフィルムと比較して面内熱伝導率が10倍以上の最大18ワット毎メートル毎ケルビン(W/m/K)と、高分子フィルムとして最も高いレベルの面内熱伝導性を備えている。フレキシブルデバイスなど、小型化、軽量性、絶縁性、柔軟性が求められる用途での放熱材料としても使える。
東レのブース説明員は「用途としては、宇宙をはじめとする極低温環境での導線被膜/保護を行う絶縁材、酸やアルカリから部材を保護する半導体プロセス用の耐薬品保護剤、可動部に耐摩耗性を付与する摺動材、面内方向の均一放熱/冷却を実施する放熱材などで利用されているフッ素系材料の代替を想定している。当社が開発したUHMWPEフィルムの利点である高強度や薄肉化対応はフッ素系材料に付加するのが難しい機能なため、それらを強みに展開していく」と話す。
会場ではUHMWPEフィルムのロールサンプルを展示した。東レのブース説明員は「現状、UHMWPEフィルムは、厚みは1〜25μm、幅は30〜50cmに対応する。量産時の幅は数mまで応じられるようにする。価格は面積当たりでフッ素系材料以下を実現できるだろう。目標としては2030年までに年間売上高20億円を目指している」と語った。
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