襟袖に蓄積した皮脂汚れを専用剤で落とすドラム式洗濯乾燥機、予洗いが不要に:材料技術
パナソニック くらしアプライアンス社は、花王と共同で開発した専用剤「極ラク汚れはがし」を使い、蓄積した皮脂汚れなどを容易に落とせる「汚れはがしコース」を搭載したドラム式洗濯乾燥機の7機種を2024年10月上旬に発売する。
パナソニック くらしアプライアンス社は2024年8月27日、オンラインで記者会見を開き、花王と共同で開発した専用剤「極ラク汚れはがし」を使い、従来は予洗(よあら)いが必要だった、蓄積した皮脂汚れなどを容易に落とせる「汚れはがしコース」を搭載したドラム式洗濯乾燥機の7機種を2024年10月上旬に発売すると発表した。
なお、7機種は、「NA-LX129DL(左開き)」「NA-LX129DR(右開き)」「NA-LX127DL(左開き)」「NA-LX127DR(右開き)」「NA-LX125DL(左開き)」「NA-LX125DR(右開き)」「NA-LX113DL(左開き)」。新製品はオープン価格となるが、税込みの参考価格はNA-LX129DL/Rが40万円前後、NA-LX127DL/Rが35万円前後、NA-LX125DL/Rが32万円前後、NA-LX113DL/Rが27万円前後となる。
洗濯機市場の動向とパナソニック くらしアプライアンス社の取り組み
パナソニック くらしアプライアンス社は、ランドリー・クリーナー事業部、ビューティー・パーソナルケア事業部、キッチン空間事業部から成る。ランドリー・クリーナー事業部の中核となる衣類ケア事業では、洗浄力や時短(効率化)、節電/節水を目的とした「衣類を清潔にする深化」と、衣類および素材の多様化や清潔ニーズに応じる「新たな生活スタイルへの対応」をテーマに製品開発を行っている。
日本電機工業会の調査レポートによれば、近年、全自動洗濯機の出荷台数は微減しているものの、ドラム式洗濯乾燥機の需要は年々高まっており、2024年度には構成比で市場の25%を占め、出荷台数は100万台に達する見込みだ。
一方、パナソニック くらしアプライアンス社はこれまで、「乾燥までのお洗濯」という考えの基に、2003年に発売したななめドラム洗濯乾燥機を皮切りに、この洗濯乾燥機向けに、洗剤液を湯にして皮脂汚れを溶かして洗う「温水泡洗浄」、作業負荷を減らす「液体洗剤/柔軟剤自動投入」、乾燥による電気代を軽減する「はやかわ乾燥ヒートポンプ」、スマートフォンでの操作を実現する「IoT対応」、着用に伴い低下した衣類の撥水機能を復活させる「撥水回復」といったさまざまな機能を開発してきた。
これらの取り組みが評価され、同社のドラム式洗濯機および洗濯乾燥機の累計出荷台数は2024年6月時点で550万台に達し、柔軟剤自動投入を搭載したタイプの累計出荷台数は230万台に到達している他、顧客の総合満足度は約99%となっている。
新製品の開発背景と機能
しかし、同社が行った調査によれば、現状は全体の半数を超える一般消費者が洗濯乾燥機などにかける前に予洗いを行っている。同社 ランドリー・クリーナー事業部 衣類ケアBU 商品企画部 部長の久保和彦氏は「予洗いを行う目的として最も多いのが、蓄積した襟(えり)や袖などの皮脂汚れであることが分かっている。これらの汚れをとる手作業の予洗いは一般消費者の大きなストレスになっている」と話す。
そこで、同社はつけ置きや予洗いなしでも汚れを落とせるドラム式洗濯乾燥機の開発を目指した。その実現に向け、液体洗剤や柔軟剤、おしゃれ着洗剤あるいは酸素系液体漂白剤を自動投入する機能「トリプル自動投入」を深化させるとともに、花王と共同で専用剤の極ラク汚れはがしを開発しブレークスルーを図った。
極ラク汚れはがしの開発に当たっては、トリプル自動投入の機能を生かすために洗剤の用途と成分を見直した。
トリプル自動投入の深化に際しては、液体洗剤や柔軟剤などの自動投入タイミングを見直し、極ラク汚れはがしの効果を最大限に発揮できる汚れはがしコースを開発した。
今回の新製品では、極ラク汚れはがしと汚れはがしコースにより、さまざまな衣類に対する人手によるつけ置きや予洗いを不要とした。「極ラク汚れはがしはパナソニックと花王でそれぞれ販売する」(久保氏)。
汚れはがしコースのメカニズムに関して、新製品の3つ目の投入タンクに極ラク汚れはがしを入れると、予洗いで利用され、頑固な汚れを変質させて落としやすい状態にする。次に1つ目の投入タンク入れられた洗濯用洗剤(界面活性剤)が利用され汚れを引きはがす。続いて、2つ目の投入タンクに入れられた柔軟剤がすすぎ工程で使われた後、脱水工程が行われる。
久保氏は「具体的には、ワイシャツの襟の皮脂汚れと衣服の皮脂臭や加齢臭などの匂いを落とすのに役立つ」と語った。極ラク汚れはがしは、汚れはがし剤コースで利用することにより、まとめ洗いや分け洗いで皮脂汚れを落とせる他、汎用コースの「おまかせ」と「わが家流」でも洗浄力の向上および洗濯時間の削減の用途で利用できる。
新製品は、好評の温水泡洗浄や液体洗剤/柔軟剤自動投入、はやかわ乾燥ヒートポンプ、IoT対応といった従来機能を搭載しつつ、衣類を清潔にする汚れはがしコースを備えている。
環境配慮の取り組みとして、梱包材を従来の発泡スチロールからパルプモールドに変更し、発泡スチロール使用量を100%削減した。製品全体における再生材の使用率も従来品と比べて4%増となる20%とした。
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