ローカル5Gとキャリア網併用でも安定化する無線通信、トヨタ宮城大衡工場で実証:スマートファクトリー
NICT、NEC、東北大学、トヨタ自動車東日本は、SRF無線プラットフォームを用い、東北地区で初めて、キャリア網(LTE/5G)とローカル5Gによるハイブリッドネットワークを活用した移動体との無線通信安定化実証を行う。
情報通信研究機構(以下、NICT)、NEC、東北大学、トヨタ自動車東日本は2024年6月17日、SRF無線プラットフォームを用い、東北地区で初めて、キャリア網(LTE/5G)とローカル5Gによるハイブリッドネットワークを活用した移動体との無線通信安定化実証を開始したと発表した。
NICT、NECおよび東北大学は、製造分野における5G高度化技術の研究開発を推進しており、その中で「Smart Resource Flow(SRF)無線プラットフォーム技術仕様書Ver.2」に対応した無線通信システムを開発した。SRF無線プラットフォームは、マルチレイヤーシステム分析を用い、製造に関わる資源(人、設備、機器、材料、エネルギー、通信など)がスムーズに流れるよう管理するシステム工学戦略に基づき、多種多様な無線機器や設備をつなぎ、安定に動作させるためのシステム構成となっていることが特徴だ。同一空間内に共存する他のアプリケーションの通信状況を監視して通信に使用するチャンネルや通信速度を適応的に制御することで、無線区間での干渉を回避して通信遅延を抑制する。
SRF無線プラットフォーム技術仕様書Ver.2は、これまでのVer.1が対象としていた無線LANに加えて、LTEや5G回線も用いたハイブリッドネットワークの利用を可能とした点が特徴だ。これにより、広いエリアに無線通信を提供できるLTEやキャリア5Gと、工場の建屋のように局所的に無線通信を提供できるローカル5Gを組み合わせることで、無線通信品質をより安定化させられる。
この無線通信システムにより、サービスエリアが異なるキャリア網とローカル5Gによるハイブリッドネットワークでの無線通信品質の安定化を実現した。さらに、このシステムの有効性を実際の製造現場で確認すべく、トヨタ自動車東日本の宮城大衡工場で、キャリア網(LTE/5G)とローカル5Gを切り替えて移動体との間の無線通信品質を評価する実験を開始した。今回の実験に向けて、NECは2024年6月17日に東北総合通信局からローカル5Gの実験試験局の免許を取得している。
今後は、今回構築した実験環境を用いてキャリア網とローカル5Gの切り替えによる移動体との無線通信評価を行い、ハイブリッドネットワークによる無線通信の安定供給について実証を進める。さらに、実証実験の結果を生かし、SRF無線プラットフォームの実用化を推進する。工場における安定した無線通信を利活用できるプラットフォームとして、技術開発および標準仕様の策定と認証制度の整備を行う。
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