工場内の複数無線通信を安定化させる新規格、技術仕様の策定完了:FAニュース
複数の無線システムが混在する環境下でも安定した通信を実現するための規格策定と標準化に取り組む、フレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)は2019年9月24日、必要な通信規格の技術仕様策定を完了したと発表した。
複数の無線システムが混在する環境下でも安定した通信を実現するための規格策定と標準化に取り組む、フレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)は2019年9月24日、必要な通信規格の技術仕様策定を完了したと発表した。
変化に柔軟に対応可能な製造現場を実現するために無線通信技術を活用したいというニーズは高まっているが、無線通信の不安定さが大きな課題となっている。さまざまなアプリケーションが免許不要周波数帯の無線規格を用いて独自で運用され、無線区間での干渉問題が生じ、アプリケーションが必要とする通信品質が維持できない状況が生まれているためだ。
FFPAはこうした課題を解決するため、2017年7月に設立された任意団体である(※)。複数の無線システムが混在する環境下で安定した通信を実現する協調制御技術の規格策定と標準化、普及の促進を通じ、製造現場のIoT化を推進することを目的としている。メンバー企業は、オムロン、国際電気通信基礎技術研究所、情報通信研究機構(NICT)、NEC、富士通、サンリツオートメイション、村田機械、シーメンスの8社である。
(※)関連記事:工場のIoT化普及に向け、オムロンやNECらがアライアンスを結成
今回の技術仕様では、NICTの提案によるSRF無線プラットフォームをシステムの基本構成として採用。SRF(Smart Resource Flow)とは、マルチレイヤーシステム分析を用い、製造に関わる資源(人、設備、機器、材料、エネルギー、通信など)が円滑に流れるように管理するシステム工学戦略である。この発想の下、多種多様な無線機器や設備が接続された環境でも安定して動作するシステム構成を作る。
技術仕様では、SRF無線プラットフォームの機能、インタフェースを規定し、製造現場に混在する多様な世代、規格、メーカーの無線システムが共存、協調できる仕組みを示した。具体的には、SRF無線プラットフォームにおいて、フィールドマネジャーが、ゲートウェイや無線端末から構成される複数の無線システムを管理、協調制御する。その際に以下の3つの点を実現することで、多様な無線通信を安定かつ効率的に運用できるようにする。
- 各無線システムにポリシーを与えることで無線資源(周波数、時間、空間)を配分する
- 無線通信とアプリケーションを意識した管理を行う
- 無線通信環境の監視を行う
また、これらのグローバル制御とともに、無線通信環境が局所的に急激に変化することに対応するため、単一システムでの自律的な制御も実現する。
FFPAでは今後、テスト仕様の策定を進め、2020年半ばをめどに認証プログラムを開始する予定としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 工場のIoT化普及に向け、オムロンやNECらがアライアンスを結成
オムロンやNECら7社が、安定した通信の協調制御技術の普及に向け「フレキシブルファクトリパートナーアライアンス」を結成。複数の無線システムが混在する環境下でも安定した通信が可能な協調制御技術の規格策定と標準化、普及を目指す。 - 工場への5G導入でファナックと日立が組む理由、完全無線通信化も視野に
ファナック、日立製作所、NTTドコモは、5Gを活用した製造現場の高度化に向けた共同検討を開始することで合意した。ファナックは本社工場、日立は大みか事業所で、5Gの電波伝搬測定と伝送実験を順次開始する。現在、工場やプラント内の通信ネットワークは基本的に有線でつながっているが、これらを完全無線通信化することも視野に入れている。 - 工場自動化のホワイトスペースを狙え、主戦場は「搬送」と「検査」か
労働力不足が加速する中、人手がかかる作業を低減し省力化を目的とした「自動化」への関心が高まっている。製造現場では以前から「自動化」が進んでいるが、2019年は従来の空白地域の自動化が大きく加速する見込みだ。具体的には「搬送」と「検査」の自動化が広がる。 - 自律するスマート工場実現に向け、IoTプラットフォーム連携が加速へ
製造業のIoT活用はスマート工場実現に向けた取り組みが活発化している。多くの企業が「見える化」には取り組むが、その先に進むために必要なIoT基盤などではさまざまなサービスが乱立しており、迷うケースも多い。ただ、これらのプラットフォームは今後、連携が進む見込みだ。 - 見えてきたスマート工場化の正解例、少しだけ(そもそも編)
製造業の産業構造を大きく変えるといわれている「第4次産業革命」。本連載では、第4次産業革命で起きていることや、必要となることについて、話題になったトピックなどに応じて解説します。第28回となる今回は、スマート工場化において見えてきた正解例について前提となる話を少しだけまとめてみます。 - スマートファクトリーはエッジリッチが鮮明化、カギは「意味あるデータ」
2017年はスマートファクトリー化への取り組みが大きく加速し、実導入レベルでの動きが大きく広がった1年となった。現実的な運用と成果を考えた際にあらためて注目されたのが「エッジリッチ」「エッジヘビー」の重要性である。2018年はAIを含めたエッジ領域の強化がさらに進む見込みだ。 - いまさら聞けない「マスカスタマイゼーション」
IoT(モノのインターネット)活用などで実現するスマートファクトリーの理想像とされる「マスカスタマイゼーション」。このマスカスタマイゼーションとは何かを5分で分かるように簡単に分かりやすく解説します。