リサイクル率1.5倍の例も、黒色プラスチックを同時判別可能な装置を受注開始:リサイクルニュース(2/2 ページ)
キヤノンは、リサイクル現場で黒色プラスチックの判別を行えるトラッキング型ラマン分光技術を用いたプラスチック選別装置を開発し受注を開始した。また、先行ユーザーとして、資源リサイクル企業のリーテムが導入し、その成果などを紹介した。
黒系ABSが回収可能になりABS樹脂回収率を1.5倍以上に
このTR-S1510をいち早く導入したのが、資源リサイクル企業であるリーテムだ。リーテムは1909年に茨城県水戸市で創業した企業で、使用済みの機械や電子機器から製錬原料を再生する金属リサイクルを行っている。水戸工場(茨城県水戸市)と東京工場(東京都大田区)の2つの工場を保有している。小型家電リサイクル認定事業者として日本最大級の回収と再生を行っている他、自治体の家庭ごみのリユースやリサイクルにも取り組んでいる。
プラスチックの資源循環を促進するための法制度の整備が進む中、プラスチックのリサイクル率も増加している。ただ、その中でも使用済み電気電子製品などに使用されているABSについては、マテリアルリサイクル率が低く、拡大の余地がある。プラスチックをリサイクルし再生材の品質を高めるためには、事前の分別が重要になる。以前から白系ABSは近赤外方式により分別されリサイクルされていたが、黒系のABSは分別が難しかったため、そのまま燃料として燃やされるケースがほとんどだった。
そこで、リーテムではTR-S1510を導入することで、白系ABSと黒系ABSを同時に分別し回収できるようした。これにより、従来は平均50%だったABSの回収率が80%に改善し、
処理時間当たりのABS回収量を1.5倍以上に増やせる見込みだという。
リーテムでのプラスチックのリサイクル工程は以下のような流れだ。最初に電子機器から電源や危険物などを外し、筐体などを破砕機で細かく砕く。その後、磁石などを使い、鉄やアルミニウムなどを分別する。残ったものからプラスチックラインでプラスチックを分別するという流れだ。TR-S1510はプラスチック分別ラインの中央に位置し、投入されたものをABS原料とその他のプラスチック原料に分離する。
リーテム 取締役 エコマネジメントユニット ユニット長の浦出陽子氏は「従来は黒系ABSは判別できないため、燃料として熱回収に活用するしかなかった。分別が可能になることで、ABS材料の回収率を高めることができる他、CO2排出量削減にも貢献する。さらに、製品メーカーにとってもマテリアルリサイクル率向上につなげることができるようになる」と価値について述べている。
プラスチックリサイクル率のさらなる向上を推進
リーテムでは今後、さらにプラスチック回収率を高めていくためにキヤノンとの協力を進めていく方針だ。浦出氏は「プラスチックの国内資源循環における課題は、リサイクルを進めたい製品メーカーと、これらを実際に行うリサイクラーの間で、品質、量、価格のミスマッチが生まれており、そのために循環が進まない状況になっている。選別純度を高め、品質を向上、安定化することで、生産性の向上と単位当たりコストの低減を実現し、利用を拡大できる可能性がある。そういう環境をさまざまなメーカーと協力して進めていく」と述べている。
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